研究課題
1.In vitroにおける各種核酸アナログ製剤の抗ウイルス効果の検討核酸アナログ使用歴のないB型慢性肝炎患者の保存血清より、DNAを抽出し、HBVゲノムを増幅し、1.4倍長のHBVゲノム(genotype AおよびC)を組み込んだHBV発現プラスミドを作製。作製したHBV発現プラスミドに既報にある薬剤耐性変異を加え、各種薬剤耐性株を発現するプラスミドを構築。作製したHBV発現プラスミドをHepG2細胞にトランスフェクションし、培養上清中に様々な濃度の核酸アナログを添加。薬剤添加72時間後の細胞内複製中間体量を測定し、核酸アナログの抗ウイルス効果を解析した。その結果、野生株におけるテノホビルの感受性は、genotype A、CのIC50がそれぞれ0.79μM、0.55μMであったことから良好と考えられたが、genotype Aにおいて感受性が低い傾向にあった。ラミブジン耐性株、ラミブジン・アデホビル耐性株、ラミブジン・エンテカビル耐性株においても、同様の検討を行ったところ、ラミブジン・アデホビル耐性株、ラミブジン・エンテカビル耐性株では、テノホビル感受性の低下を認めた。また、いずれの耐性株においてもgenotype AにおけるIC50は、genotype Cに比べ、高く、治療抵抗性である可能性が示された。2.In vivoにおける各種核酸アナログ製剤の抗ウイルス効果の検討HBV発現プラスミドをトランスフェクションした培養細胞から産生されたHBV粒子をヒト肝細胞キメラマウスに接種。HBV感染キメラマウスを作製後、マウスに核酸アナログを投与し、マウス血中のHBV DNA量の変化を検討した。その結果、アデホビル耐性変異として報告されているN236T変異が新規核酸アナログ製剤として期待されているテノホビルにおいても中等度の薬剤耐性を示す可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究実績に示したように、今年度は、HBV genotype A感染患者血清からHBV発現プラスミドをクローニングし、核酸アナログの一つであるテノホビルを用いて、in vitroにおける薬剤感受性の評価を行った。また、HBV感染ヒト肝細胞キメラマウスを作製し、マウスに核酸アナログ製剤を経口投与することによる抗ウイルス効果についても検討を行った。これらは、研究計画書のした3つの検討のうち、2つにおいて、年度内の目標を達成しているものと考える。また、HBV感染および非感染ヒト肝細胞キメラマウスよりヒト肝細胞を採取し、遺伝子発現プロファイルを作成し、現在、HBV感染に伴いヒト肝細胞内で影響を受ける免疫応答に関与する遺伝子の抽出および確認を行っている。これは、残りの検討にあたり、一部計画を変更したものの、ほぼ計画を遂行できているものと考えている。
達成度にも示したように、現在のところ、当初の計画に準じて研究が推進できている。今後は、まず、HBV持続感染ヒト肝細胞キメラマウスに核酸アナログ製剤を長期投与することにより、核酸アナログ耐性株が出現するか否かについて検討を行う予定である。さらに、B型慢性肝炎治療において、HBVを肝細胞から排除する方法を見出すことは大きな課題であることから、in vitro、in vivoのモデルを利用して、HBVの生体内における免疫寛容誘導機構の解明に向けた検討を行っていく。その一つとして、本研究では、HBV感染に伴うヒト肝細胞内への影響を解析し、HBVの免疫応答への関与を明らかにしていく予定である。
該当なし
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