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2012 年度 実施状況報告書

肺炎病巣の形成過程および肺炎球菌ワクチン効果のライブイメージングによる解明

研究課題

研究課題/領域番号 24791024
研究機関山口大学

研究代表者

荻野 英賢  山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80589325)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード感染症 / 免疫学
研究概要

肺炎球菌による感染症は我が国の死亡率第4位の「肺炎」の原因であるとともに、小児が多く罹患し重篤な後遺症が残る「細菌性髄膜炎」の原因でもある。
肺炎球菌の感染機構に関する研究は、培養免疫細胞の肺炎球菌に対する応答や肺炎球菌変異株を用いたマウス個体への感染実験などが報告されているが、生体内での複数の免疫細胞による複雑な相互作用は明らかにされていなかった。
本研究は、すでに構築している生体内の免疫細胞の動的挙動を観察するシステムを利用し、世界で初めてとなる『生きているマウスの肺内部における肺炎球菌感染巣の形成過程および免疫細胞の挙動』を明らかにし、肺炎球菌ワクチンの効果をライブイメージングすることを目的としている。以下の研究計画のうち、可視化モニタリング系の構築を本助成期間に行なった。
可視化モニタリング系の構築:1)肺炎球菌染色体上への赤色蛍光タンパク質遺伝子導入による肺炎球菌可視化。2)GFP 遺伝子を導入した免疫細胞のマウスへの移入条件および観察至適条件の検討。3)マウスへの肺炎球菌感染条件の検討。
細胞動態解析:1)肺炎球菌のマウス生体内(肺)でのコロニー形成過程や局在部位の解析。2)免疫細胞の肺炎球菌に対する挙動の解析。3)肺炎球菌ワクチン投与後の肺炎球菌および免疫細胞の動態変化の解析。
肺炎球菌可視化では、ランダムスクリーニングにより高発現するプロモーターを複数得ることができた。このうちの一つを用いて感染条件の検討を行ったところ、正常な肺の炎症および肺炎球菌の生体肺内部での局在が観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2年間の研究期間のうち平成24年度は可視化モニタリング系の構築を目標に研究を推進してきた。
当初課題であった共焦点顕微鏡観察に耐えうる蛍光強度を持つ肺炎球菌の作製も、肺炎球菌ゲノムを基にしたランダムスクリーニングによって強度な発現をしているプロモーターを複数取得することができたため、順調に目的を達成することができた。
免疫細胞の分離取得および移入条件の検討も、T細胞を初めとして好中球などの免疫細胞に関して実験を行ない良好な結果を得ている。
マウスへの肺炎球菌感染条件の検討を行ない、文献値よりやや量を必要とするが適切に肺炎を誘発することができる条件を得ることができている。

今後の研究の推進方策

2年間の研究期間のうち平成25年度は細胞動態解析を行なう。具体的には、肺炎球菌感染時の肺内部における肺炎球菌と免疫細胞の挙動を解析し、感染巣形成過程を明らかにする。さらに、成分の異なる2 種類の肺炎球菌ワクチンを投与し肺炎球菌への応答がどのように経時的に変化するか解析し、感染巣でのワクチンの効果を評価する。
肺炎球菌のマウス生体内(肺)でのコロニー形成過程や局在部位の解析では、感染巣形成過程や肺炎球菌の局在変化などをライブイメージング装置を用いて同一個体で経時的に観察し、マウスへの投与細菌数の違いによるコロニー形成速度の違いや経時的な局在変化をリアルタイムで解析することで肺炎球菌の感染巣形成過程を明らかにする。
免疫細胞の肺炎球菌に対する挙動の解析では、肺炎球菌が形成した感染巣に対する免疫細胞の浸潤、凝集、貪食の過程を経時的に観察し、肺炎球菌の排除に関わる免疫細胞ネットワークを明らかにすることで、T 細胞非依存性の本研究条件において、肺炎病巣へのT 細胞を初めとした免疫細胞の新しい反応様式が明らかにされると期待される。
肺炎球菌ワクチン投与後の肺炎球菌および免疫細胞の動態変化の解析では、2 種類のワクチン(ニューモバックス/プレベナー)をそれぞれ投与したマウスにおける肺炎球菌感染時のT 細胞非依存的/依存的免疫反応でそれぞれ惹起される免疫細胞の動態解析を行なう。ワクチン成分の違いにより、細胞性免疫の活性やT 細胞の局在性に違いが見られることが予想される。本研究により、ワクチン成分の違いによる肺炎球菌排除過程の差異を明らかにできる。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は順調に研究が推移した。特に肺炎球菌染色体上への赤色蛍光タンパク質遺伝子導入による肺炎球菌可視化は高額な試薬類を使用せずランダムスクリーニングにより実現できた。また、免疫細胞の分離取得および移入条件の検討も、当研究室で蓄積していた知見を応用することで短期間に十分な量の精製細胞を分取することに成功した。以上の結果より当初予定より支出が抑えられた。
平成25年度は解析の幅を広げ、さらに多角的な面から細胞動態解析を行なう。具体的には、肺炎球菌が形成した感染巣に対する免疫細胞の動態解析においてT細胞や好中球に加えてワクチン接種後の抗体作成に関わるB細胞やアレルギーに関わる好酸球などについても研究を行う。細胞精製および大量分取には高額な試薬類を必要とするため次年度使用に充てたい。
ワクチン効果の動態解析では、タイムスパンおよび対象種別を細分化しより詳細なマウスでの実験を行なう。これにはマウス購入や飼育に関わる経費が多く必要となるため次年度使用に充てたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 腸炎の発症におけるCD69分子の役割2013

    • 著者名/発表者名
      長谷川明洋、荻野英賢、大津山賢一郎、中山俊憲、白井睦訓
    • 学会等名
      第86回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉県)
    • 年月日
      20130318-20130320
  • [学会発表] Real-time Cellular Imaging of T Lymphocyte Accumulation in a Mouse Asthma Model2013

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Hasegawa, Hidetaka Ogino, Mutsunori Shirai, Toshinori Nakayama
    • 学会等名
      The 23rd CDB Meeting
    • 発表場所
      RIKEN CDB, Kobe(兵庫県)
    • 年月日
      20130122-20130123
  • [学会発表] 酢酸菌高温耐性株における細胞形態形成機構の解析2012

    • 著者名/発表者名
      荻野英賢,長谷川明洋,大津山賢一郎,白井睦訓
    • 学会等名
      第65回 日本細菌学会中国・四国支部総会
    • 発表場所
      徳島大学 長井記念ホール(徳島県)
    • 年月日
      20121020-20121021

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公開日: 2014-07-24  

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