肺炎球菌による感染症は我が国の死亡率第3位の「肺炎」の原因であるとともに、小児が多く罹患し重篤な後遺症が残る「細菌性髄膜炎」の原因でもある。 肺炎球菌の感染機構に関する研究は、培養免疫細胞の肺炎球菌に対する応答や肺炎球菌変異株を用いたマウス個体への感染実験などが報告されているが、生体内での複数の免疫細胞による複雑な相互作用は明らかにされていなかった。 本研究は、すでに構築している生体内の免疫細胞の動的挙動を観察するシステムを利用し、世界で初めてとなる『生きているマウスの肺内部における肺炎球菌感染巣の形成過程および免疫細胞の挙動』を明らかにし、肺炎球菌ワクチンの効果をライブイメージングすることを目的としている。以下の研究計画のうち、細胞動態解析を本年度は行った。 可視化モニタリング系の構築:1)肺炎球菌染色体上への赤色蛍光タンパク質遺伝子導入による肺炎球菌可視化。2)GFP 遺伝子を導入した免疫細胞のマウスへの移入条件および観察至適条件の検討。3)マウスへの肺炎球菌感染条件の検討。 細胞動態解析:1)肺炎球菌のマウス生体内(肺)でのコロニー形成過程や局在部位の解析。2)免疫細胞の肺炎球菌に対する挙動の解析。3)肺炎球菌ワクチン投与後の肺炎球菌および免疫細胞の動態変化の解析。 細胞動態解析の結果、経鼻投与した蛍光肺炎球菌が感染巣を形成する様子が観察された。また貪食されたような球状の細菌塊が観察された。
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