研究概要 |
非莢膜型インフルエンザ菌(nontypeable Hamophilus influenzae; NTHi)は市中肺炎や慢性下気道感染症の重要な原因菌の一つである。一旦、下気道に定着すると完全に除去することは困難であり、繰り返す気道感染によって気管支拡張像が進行し、患者のQOLを著しく障害する。今回我々はインフルエンザ菌が持つもう一つの特徴である細胞内寄生性に着目し、細胞内寄生後に気道上皮細胞から産生されるI型インターフェロンがNTHiの細胞内寄生性を促進し、好中球などの宿主自然免疫からの回避機構を獲得しているのではないかと仮説を立て、研究を行った。 NTHiの気道上皮細胞侵入性を確認するため、H292細胞をNTHi培養液で共培養し、電子顕微鏡で細胞内NTHiを確認したところ、細胞表面から細胞内に侵入するNTHiを確認することができた。またCOPD患者の下気道に慢性的に定着したNTHi臨床分離株をH292細胞と共培養した後に破砕し、細胞内NTHi数を測定したところ、菌株によって細胞内侵入性に有意差があることが確認できた。さらに気道上皮細胞をrecombinant IFN-βで前処理した後にNTHiと共培養したところ、IFN-βの用量依存的に細胞内NTHi菌数が増加することも確認できた。さらにインフルエンザ菌をマクロファージ(voluntterより採取した血液より分離)、およびH292細胞と共培養し、細胞上清中のIFN-β、IFNN-β mRNA発現をそれぞれELISA, RT-PCRで測定したところ、有意に増加していることが明らかとなった。以上のことより、NTHiが感染することで宿主気道上皮細胞およびマクロファージよりIFN-βが産生され、INF-βによってNTHiの気道上皮細胞内侵入性が促進し宿主自然免疫系を回避し、慢性下気道感染症が成立するものと考えられた。
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