研究課題
若手研究(B)
本研究課題の主要目的は、病原真菌Candida glabrataにおける多剤耐性機序を解明し、治療戦略の開発に応用していくことである。その中で、アゾール系抗真菌薬耐性機序として重要な薬剤排出ポンプを阻害剤で不活化すると、アゾール系薬には感受性になるが、一方で、別系統のキャンディン系抗真菌薬に対しては高度耐性が誘導されるという新規の現象を発見した。研究実施計画に示したとおり、まずは現在入手可能な複数のポンプ阻害剤で同様の現象が誘導されることを確認した。また、各薬剤排出ポンプをコードしている遺伝子の単独欠損株、重複欠損株を作製し、その表現形を解析したところ、アゾール排出ポンプの阻害自体がキャンディン耐性を誘導しているわけではなく、薬剤の新たな作用によるものであることが明らかになった。この現象は、臨床上、最も分離頻度の高いCandida albicansをはじめ、他のカンジダ種(Candida parapsilosis, Candida krusei, Candida tropicalis)においても同様に確認された。これらの研究成果は、現在精力的に行われている薬剤排出ポンプ阻害薬開発の分野のみならず、今後の新規治療戦略の開発に重要な情報をもたらすものと考える。
2: おおむね順調に進展している
一部予定よりも時間がかかったところはあるが、計画よりも早く成果が得られた実験もある。総合的には概ね順調に進展させることができている。平成24年度に得られた研究成果の一部は、当該年度中にPLoS Pathogens (インパクトファクター: 9.127) に掲載され、学会での発表も行った。
病原真菌Candida glabrataにおける多剤耐性機序を、より詳細に解明していく。今後はタンパク質レベルの解析に重点をおき、2次元電気泳動や免疫沈降法などを利用しながら、薬剤耐性化に関与する新規タンパク質の同定を目指す予定である。
2次元電気泳動や免疫沈降法、ウェスタンブロット用の試薬や各種抗体などが中心となる。一部は学会発表用の旅費に充てる予定である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)
PLoS Pathogens
巻: 9 ページ: e1003160
10.1371/journal.ppat.1003160
FEMS Yeast Research
巻: 13(4) ページ: 411-421
10.1111/1567-1364.12043