研究課題
本研究課題の主要目的は、病原真菌Candida glabrataにおける多剤耐性機序を解明し、治療戦略の開発に応用していくことである。その中で、アゾール系抗真菌薬耐性機序として重要な薬剤排出ポンプを阻害剤で不活化すると、アゾール系薬には感受性になるが、一方で、別系統のキャンディン系抗真菌薬に対しては高度耐性が誘導されるという新規の現象を発見した。研究実施計画に示したとおり、まずは現在入手可能な複数のポンプ阻害剤で同様の現象が誘導されることを確認した。また、各薬剤排出ポンプをコードしている遺伝子の単独欠損株、重複欠損株を作製し、その表現形を解析したところ、アゾール排出ポンプの阻害自体がキャンディン耐性を誘導しているわけではなく、薬剤の新たな作用によるものであることが明らかになった。この現象は、臨床上、最も分離頻度の高いCandida albicansをはじめ、他のカンジダ種(Candida parapsilosis, Candida krusei, Candida tropicalis)においても同様に確認された。これらの研究成果は、現在精力的に行われている薬剤排出ポンプ阻害薬開発の分野のみならず、今後の新規治療戦略の開発に重要な情報をもたらすものと考える。また、抗真菌薬耐性や病原性に深く関与している小胞体ストレス応答について、C. glabrataが非常にユニークなメカニズムを獲得していることを明らかにした。これらの研究成果は海外論文にて公表した。
2: おおむね順調に進展している
一部予定よりも時間がかかったところはあるが、計画よりも早く成果が得られた実験もある。総合的には概ね順調に進展させることができている。平成25年度に得られた研究成果の一部は、PLoS Pathogens (インパクトファクター: 9.127) に掲載され、学会での発表も行った。また、これらの内容に関するレビューを執筆し、Virulence (インパクトファクター: 2.787)に掲載された。
病原真菌Candida glabrataにおける多剤耐性機序と病原因子をより詳細に解明する。得られた知見は、他の病原真菌にも応用していく予定である。
Candida glabrataの薬剤耐性に関して、期待以上の実験データが得られたため、よりインパクトの高いジャーナルへの投稿を目指し、一部の研究計画を追加した。そのため、次年度に最終的な成果のまとめと学会発表、論文投稿を行う予定とした。最終的な確認実験と研究成果のまとめを行う。国内外の学会で発表し、国際誌に英語論文を投稿する。そのため、次年度使用予定の助成金は、試薬・消耗品、学会参加費・旅費、論文投稿にかかる諸費用に充てる予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
Virulence
巻: 5 ページ: 365-370
10.4161/viru.27373
PLoS Pathogens
巻: 9 ページ: e1003160
10.1371/journal.ppat.1003160
FEMS Yeast Research
巻: 13(4) ページ: 411-421
10.1111/1567-1364.12043