研究実績の概要 |
本研究課題は、病原真菌における多剤耐性機序を解明し、新たな治療戦略の開発に応用していくことを目的としている。特に、抗真菌薬耐性が臨床的に問題となっている病原真菌Candida glabrataに焦点をあてて研究を進めた。薬剤排出ポンプの活性化は、アゾール系抗真菌薬への耐性機序として重要であるが、これを阻害剤で不活化すると、アゾール系薬には感受性になるが、一方で、別系統のキャンディン系抗真菌薬に対しては高度耐性が誘導されるという新規の現象を発見した。複数のポンプ阻害剤で同様の現象が誘導されるということも確認した。しかし、各薬剤排出ポンプをコードしている遺伝子の単独欠損株、重複欠損株を作製し、その表現型を解析したところ、アゾール排出ポンプの阻害自体がキャンディン耐性を誘導しているのではなく、薬剤の新たな作用によるものであることが判明した。この現象は、臨床上、最も分離頻度が高いCandida albicansをはじめ、他のカンジダ種(Candida parapsilosis, Candida tropicalis, Candida krusei)においても同様に確認された。これらの研究成果は、現在精力的に行われている薬剤排出ポンプ阻害薬の開発に重要な情報をもたらすものと考える。 また、抗真菌薬耐性や病原性に深く関与している小胞体ストレス応答について、C. glabrataがきわめてユニークなメカニズムを獲得していることを明らかにした。これらの研究成果は海外論文にて公表した。 H26年度には、真菌細胞の液胞膜に存在するV-ATPaseが抗真菌薬耐性に重要な役割を担っていることを明らかにし、新たに2報の論文を作成中である。
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