研究課題/領域番号 |
24791029
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
片山 由紀 順天堂大学, 医学部, 助教 (60365591)
|
キーワード | 黄色ブドウ球菌 / バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌 / rpoB / ppGpp / 緊縮制御ネットワーク |
研究概要 |
RNA ポリメラーゼβサブユニットをコードするrpoB遺伝子は、緊縮制御ネットワークの関連遺伝子である。細菌は栄養飢餓でアミノ酸が欠乏すると、タンパク合成が停止し、ppGpp を合成する。そしてこの合成されたppGpp がRNA ポリメラーゼβサブユニットやそのプロモーター領域に結合すると、遺伝子における転写活性が質と量の両面で変化し、その結果、病原性、薬剤耐性化および代謝経路の変化が生じることがわかりつつある。 申請者らは、黄色ブドウ球菌のさまざまなrpoB 遺伝子の変異株を用いてppGpp を検出したところ、変異株においてppGpp の産生量が増加していることがわかった。さらにこのrpoB 遺伝子の変異により、菌の表現型が変わり、増殖速度の低下、自己融解酵素の活性化、薬剤耐性化が認められた。増殖速度の低下からsmall colony varoant (SCV) 形成能に関与する可能性があり、今後検討する。また、抗生物質βラクタム剤、バンコマイシン、リネゾリド、ダプトマイシンの耐性化も見られ、それと相関して細胞壁の肥厚、自己融解酵素の活性化が見られたので、これらの代謝に関わるメカニズムに関与している事が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
rpoB の変異により、抗生物質βラクタム剤、バンコマイシン、リネゾリド、ダプトマイシンの耐性化も見られ、それと相関して細胞壁の肥厚、自己融解酵素の活性化が見られたので、これらの代謝に関わるメカニズムに関与している事が示唆された。もともとrpoB はリファンピシン耐性に関与していることが報告されていたため、新しい事象を見出した。また、バンコマイシン中間耐性黄色ブドウ球菌(VISA)のなかで、新規表現型のsVISA を見出した。これはさらにバンコマイシンの耐性度があがり、これらにもrpoBやrpoC の遺伝子も関与していたことがわかった。論文にて発表済み。
|
今後の研究の推進方策 |
作成した変異構築株の表現型を解析する。ppGpp 合成変化の認められた薬剤選択変異株について、変異個所を検出する。 1)薬剤耐性:MIC測定による薬剤感受性プロファイリング、薬剤耐性化に伴う細胞壁肥厚の電子顕微鏡観察、自己融解酵素活性の測 定。 2)病原性:バイオフィルム形成能、Small Colony Variant (SCV)形成能、宿主感染細胞への影響(殺菌力)、宿主への定着性の検討 。3 )アレイ解析、全ゲノム塩基配列の決定とSNP 解析。
|
次年度の研究費の使用計画 |
来年度よりMiseq による次世代シークエンサーの解析を行うため、その消耗品にあてる。学会活動が多くなるため。 次世代シークエンサー解析のための消耗品。および、国内、国際学会費、論文投稿費用。
|