研究課題/領域番号 |
24791032
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
金子 幸弘 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (90469958)
|
キーワード | カンジダ / シクロオキシゲナーゼ阻害剤 / 併用療法 / 抗真菌薬 / フルコナゾール / 拮抗 / 排出ポンプ |
研究概要 |
カンジダ属真菌Candida albicans(C. albicans)において、シクロオキシゲナーゼ(cox)阻害剤が抗真菌薬抵抗性を誘導するメカニズムを解明し、治療に応用することを目的として研究を開始した。カンジダ属真菌は、日和見・難治性感染症の主要真菌病原体であり、中でもC. albicansは、カンジダ症の原因として最も多く分離され、カンジダ症の約半数の症例に関与している。多くは抗真菌薬単剤で治療可能であるが、難治性症例も存在することから、併用療法などの開発が望まれている。これまでの併用療法に関する研究により、既存の抗真菌薬との併用で相乗または拮抗する薬剤を明らかにしてきた。640種類の化合物と抗真菌薬とを組み合わせた併用療法の探索を行った結果、抗真菌作用を増強する化合物よりも、拮抗する化合物が多く存在していた。本研究では、拮抗化合物の中で、特に、cox阻害剤に着目した。cox阻害剤は、解熱剤としてしばしば使用される薬剤であり、解熱目的で抗真菌薬と同時に使用される可能性の高い薬剤である。複数のcox阻害剤について、アゾール系抗真菌薬のひとつであるフルコナゾール(FLCZ)との拮抗作用を検討したところ、ジクロフェナクナトリウムが最も強い拮抗作用を示し、FLCZの抗真菌活性を1/8に低下させた。イブプロフェンもFLCZの抗真菌活性を1/4に低下させたが、構造がやや異なるcox阻害剤はFLCZの活性を変化させなかった。FLCZの活性を低下させるメカニズムを解明するため、さらに検討を行った。薄層クロマトグラフィーによる検討で、ジクロフェナクナトリウムは、エルゴステロール合成には直接影響していないことが明らかとなった。遺伝子発現解析では、薬剤排出ポンプの遺伝子が上昇していることが明らかになり、排出ポンプの変異株を用いた検討により、排出ポンプの過剰発現が抗真菌薬の活性低下に寄与していることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シクロオキシゲナーゼ阻害剤を含む複数の薬剤が、抗真菌薬の活性を低下させることを、すでに英文論文として公表している。また、現在、シクロオキシゲナーゼ阻害剤が抗真菌薬の活性を低下させるメカニズムを解明し、別の英文論文として投稿中であり、さらに、in vitroの成果を発展させる研究に着手しており、おおむね順調に経過している。
|
今後の研究の推進方策 |
シクロオキシゲナーゼ阻害剤が、抗真菌薬の活性を低下させるメカニズムとして、排出ポンプの過剰発現を誘導することを明らかにしたが、どのようにして排出ポンプの過剰発現を誘導しているのかが明らかになっていない。排出ポンプの発現を抑制することができれば、抗真菌薬の作用を増強することが可能になるため、排出ポンプの発現にどのように影響するのか知ることは、新規治療戦略開発の糸口となりうる。したがって、本研究で得られた結果から、さらに新規治療標的の探索への応用に向けて、作用機序の解明を進める予定である。また、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、解熱剤として頻用される薬剤であり、臨床的にも抗真菌薬と同時に使用される可能性が高い。そのため、シクロオキシゲナーゼが、抗真菌薬の効果を低下させる可能性があることを周知することは、臨床的に意義があると考えられ、最終年度として、研究成果の公表に一層の力を入れる。
|