経鼻インフルエンザワクチンにおいて、合成二本鎖RNAに高い粘膜アジュバント活性を示すことが明らかになっている。合成二本鎖RNAが示す粘膜アジュバント活性の作用機序を明らかにすることを目的としたが、当初計画していた通りの実験を進行することが出来なかった。 インフルエンザウイルスの感染時にはウイルスゲノムがTLR7に認識されることから、TLR7も良い粘膜アジュバントになりうると考えられる。TLR7のリガンドとなるImiquimodには粘膜アジュバント活性が認められなかったが、今回改めてその他のTLR7リガンドに関して経鼻インフルエンザワクチンにおける粘膜アジュバント活性を検討した。この結果、Imiquimod同様に、合成二本鎖RNAと比較して高い粘膜アジュバント活性は認められなかった。 合成二本鎖RNAの受容体となるTLR3を発現するCD8陽性樹状細胞の評価を行うため、脾臓に存在するCD4あるいはCD8陽性樹状細胞それぞれの単離を試みた。昨年度の検討から細胞数が非常に少ないことが明らかになっていたので、複数匹のマウス脾臓からMACSを用いて標的樹状細胞の精製を試みた。FACS解析の結果CD4陽性樹状細胞の存在は認められず単離精製できなかったが、CD8陽性樹状細胞は少ないながらも単離精製でき、合成二本鎖RNA刺激に対してIFN-λを産生することが示された。 鼻腔粘膜領域に存在する細胞に対する合成二本鎖RNAの効果を明らかにする必要があるが、脾臓と異なり細胞数が少ないため標的細胞の調製法が課題として残された。今後、明らかになった課題を克服する手段を考えつつ,研究を継続したい。
|