近年、本邦では2500g未満の低出生体重児が増加している。一方、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)も増加していることが知られているがその原因は明らかになっていない。1995~2011年の間に新潟大学小児科で腎生検に診断されたFSGS症例16例について検討を行ったところ、6例(37.5%)が低出生体重児(LBW)であり、日本おける低出生体重児の割合(9.7%)を大きく上回ることが明らかとなった。低出生体重がFSGS発症に関与する可能性が示唆され、今回その要因について以下組織学的検討を行った。 正常出生体重のFSGS群(NBW-FSGS)、低出生体重のFSGS群(LBW-FSGS)および対象として年齢の一致した正常出生体重の微小変化組織症例について、臨床所見、腎組織(糸球体面積、単位面積あたりの糸球体細胞数)を比較検討した。その結果、腎生検時の推定糸球体濾過量は、LBW-FSGS、NBW-FSGS、対照群でそれぞれ86.0±22.7、127.8±16.6、112.8±13.2 ml/分/1.73㎡とLBW-FSGS群で有意に低かった。 LBW-FSGSの糸球体面積は対照群に対し91%、NBW-FSGSに対し75%拡大していた。一方、糸球体面積あたりの上皮細胞数(上皮細胞密度)はLBW-FSGSでは対照群に比し48%、NBW-FSGSに比し33%と有意に少なく、NBW-FSGSも対照群に比し23%と有意に減少していた。拡張した糸球体面積比率で補正した上皮細胞数は対照群(1866.2±446.7/mm2)とNBW-FSGS(1666.2±317.1/mm2)に比し、LBW-FSGS(1028.2±358.4/mm2)は依然として有意に減少していた。 以上より低出生体重児では糸球体上皮細胞の脱落・喪失を生じやすく、FSGSの進展、増悪に関与することが示唆された。
|