研究課題/領域番号 |
24791049
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
重村 倫成 信州大学, 医学部, 助教 (70623916)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 慢性肉芽腫症 / トランスポゾン / iPS細胞 / 遺伝子治療 |
研究概要 |
慢性肉芽腫患者4名と臍帯血からT細胞を刺激活性化させ、ホストゲノムへの挿入が起こらない(-)鎖RNAウイルスであるセンダイウイルスを用いて山中因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)を導入し、iPS細胞を樹立した。樹立したiPS細胞のAP活性およびOct4、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、Nanogの発現を確認し、免疫不全マウスへの移植によりテラトーマ形成能を確認した。これらのiPS細胞からAGM-S3細胞上で、day 0-4まではBMP4 40ng/ml、day 4-6はSCF 50ng/ml、VEGF 40ng/ml内で培養し、day 6以降はSCF 50ng/ml、 TPO 10ng/ml、G-CSF 50 ng/ml IL-3 50 ng/ml, FLTT3-L 50 ng/ml で培養した。Day 15での培養細胞をメイギムザ染色、ペルオキシダーゼ染色、エステラーゼ染色を行い、単球、好中球を確認した。慢性肉芽腫症患者iPS細胞からは活性酸素産生は確認されず、臍帯血由来のiPS細胞から活性酸素産生を確認した。 PiggyBacトランスポゾン法を用いて、慢性肉芽腫症患者末梢血T細胞へ目的遺伝子を導入し、T細胞の遺伝子改変を行った。薬剤にて遺伝子導入された細胞を選択肢しセンダイウイルスを用いてiPS細胞への誘導を行った。50個以上のES細胞様コロニーが出現し、それらのコロニーは遺伝子導入されていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は慢性肉芽腫症患者由来iPS細胞の樹立、樹立したiPS細胞から血球系への分化誘導、さらにPiggyBacトランスポゾン法を用いて、患者末梢血T細胞の遺伝子改変、改変細胞からのiPS細胞樹立までを実施した。しかし目的遺伝子の発現がなく、研究の進行は一旦遅れた。しかしpromoterのサイレンシングが原因と判明し、promoterを変更して研究を進めており、おおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
改変T細胞由来のiPS細胞から顆粒球への分化誘導を行ったが、目的蛋白の発現、活性酸素産生能の回復を認めなかった。原因として目的遺伝子発現のCMV promoterがサイレンシングされた可能性があり、幹細胞での発現のよいEF1-αへの変更を行い、研究を進行していく。 1) iPS細胞から誘導されるCD45陽性細胞をマグネットビーズで選択的に採取し、CD34, CD38, CD33, c-kitなどの造血幹細胞・前駆細胞に発現している表面マーカーをフローサイトメトリーで解析する。また、CD45陽性細胞からメチルセルロースによるコロニー形成能を調べる。 2)CD45陽性細胞やCD34陽性・CD45 陽性細胞をNOGマウスへ移植し、経時的に血液学的所見を確認する。また、修復iPS細胞好中球由来の活性酸素産生能を未修復iPS細胞由来好中球と比較する。 3) 遺伝子治療で白血病発症に至ったX-SCID、X-CGDではそれぞれRVベクターがLIM-only protein 2, MDS1-EVI1に挿入されたことが発癌に関与していた。このため、トランスポゾンベクターがこれらの領域に挿入されていないことを確認する。また、トランスポゾンベクターの癌原遺伝子内あるいはその近傍への挿入頻度をRVとランダムコントロールと比較する。 4) CYBBトランスポゾンベクターにIRESを挟んで自殺遺伝子TSV-TKを挿入したベクターを作成する。このベクターを用いてiPS細胞の樹立と血液細胞への分化を図る。In vitroの系と、NOGマウスの移植の系でガンシクロビル投与により細胞死の誘導を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は遺伝子改変したiPS細胞からの血球で目的蛋白の発現を認めなく、原因解明のための研究の遅れと購入物品の納品日が次年度となったことにより、前年度未使用額が生じた。原因が解明したことで、さらにiPS細胞を樹立する予定である。そのためのiPS細胞作製用センダウイルスベクターキット、サブクローニング用試薬類、遺伝子導入試薬が必要となる。 PCR関連試薬(200)、iPS細胞培養培(300)、iPS細胞フィーダー細胞(200)、サイトカイン(200)、抗体(300)、CD34陽性細胞採取キット(200)、NOGマウス購入費(200)、調査研究旅行費、発表成果等(150)、投稿料(100) (千円)
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