研究概要 |
慢性肉芽腫患者4名と臍帯血からT細胞を刺激活性化させ、ホストゲノムへの挿入が起こらない(-)鎖RNAウイルスであるセンダイウイルスを用いて山中因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)を導入し、iPS細胞を樹立した。樹立したiPS細胞のAP活性およびOct4、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、Nanogの発現を確認し、免疫不全マウスへの移植によりテラトーマ形成能を確認した。これらのiPS細胞からAGM-S3細胞上で、day 0-4まではBMP4 40ng/ml、day 4-6はSCF 50ng/ml、VEGF 40ng/ml内で培養し、day 6以降はSCF 50ng/ml、 TPO 10ng/ml、G-CSF 50 ng/ml IL-3 50 ng/ml, FLTT3-L 50 ng/ml で培養した。Day 15での培養細胞をメイギムザ染色、ペルオキシダーゼ染色、エステラーゼ染色を行い、単球、好中球を確認した。慢性肉芽腫症患者iPS細胞からは活性酸素産生は確認されず、臍帯血由来のiPS細胞から活性酸素産生を確認した。 PiggyBacトランスポゾン法を用いて、慢性肉芽腫症患者末梢血T細胞へ目的遺伝子遺伝子を導入し、T細胞の遺伝子改変を行った。薬剤にて遺伝子導入された細胞を選択しセンダイウイルスを用いてiPS細胞への誘導を行った。50個以上のES細胞様コロニーが出現し、それらのコロニーは遺伝子導入されていることを確認した。しかし改変T細胞由来のiPS細胞から顆粒球への分化誘導を行ったが、目的蛋白の発現、活性酸素産生能の回復を認めなかった。原因として目的遺伝子発現のCMV promoterがサイレンシングされた可能性があり、幹細胞での発現のよいEF1-αpromoteへ変更した。まずサイレンシングの有無を確認するためGreen Fluorescent Protein(GFP )を目的遺伝子として導入し、T細胞の遺伝改変を行い、センダイウイルスを用いてiPS細胞へ誘導を行った。GFP 発現のあるiPS細胞様コロニーが出現したが、2-3継代でその発現は消失し、目的遺伝子発現を維持することが困難であることが判明した。
|