研究概要 |
我々は4-D Nucleofector Systemを用いたトランスポゾン遺伝子導入法、および血清、細胞株、ウイルスを用いない独自のT細胞培養系を用いて、10mlの健常ドナー末梢血から平均で1.3 x 10e8個のCD19抗原特異的キメラ抗原受容体遺伝子導入(CD19-CAR) T細胞を得ることに成功した。得られたCD19-CAR T細胞数は臨床応用に耐えうる十分な数であった。このCD19-CAR T細胞と、Ph陽性急性リンパ性白血病細胞を7日間共培養したところ、CD19-CAR T細胞はEffector / Target比(E/T比)=1:5, 1:10において7つの細胞株すべてを除去し、E/T比=1:50においても白血病細胞を十分に減少させることを確認した。このCD19-CAR T細胞の抗白血病細胞効果はT315I変異の有無に関わらず同等であった。また、CD19-CAR T細胞は白血病細胞との共培養下において、20日間で平均37倍増殖し、2度の白血病細胞の曝露刺激によって、導入されたCD19-CAR遺伝子の発現、細胞表面TRAILの発現およびIL-2の産生のすべてが、2度とも増大することが確認された。トランスポゾン遺伝子導入法は、現在広く用いられているレトロウイルス遺伝子導入法と比較し安価であり、我々の開発したCD19-CAR T細胞を用いた細胞免疫療法は、薬剤耐性Ph陽性急性リンパ性白血病に対する新規の治療選択肢のひとつとなる可能性がある。
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