研究課題
脊髄性筋委縮症(Spinal muscular atrophy)はSMN1遺伝子の異常から発症する致死的な遺伝性神経筋疾患である。現在、有効な治療法は確立されていない。治療法としてSMN1遺伝子とわずか5塩基のみが異なるSMN2遺伝子の活用、つまり「SMN2遺伝子エクソン7のスプライシング正常化」を目指した治療法が有望とされている。申請者は、SMN2遺伝子エクソン7近傍の配列を組み込んだミニ遺伝子を作成した。ミニ遺伝子の作成にあたってはHabara Y et al. J Biochem 2008.143. 303-10の方法を用いた。申請者は、このミニ遺伝子とHeLa細胞を用いたin vitro スプライシング解析系において、「SMN2遺伝子エクソン7のスプライシング正常化」する薬剤の探索を試みた。その結果、低分子化合物Aが、濃度依存性にSMN2遺伝子のエクソン7スプライシングを正常化する驚くべきデータを得た。この結果をもとに、コンピュータを用いて化合物Aに類似しており「SMN2遺伝子エクソン7のスプライシング正常化」効果が期待される候補化合物を理論的に割り出した。この中から、常温で安定している数十種類の候補薬を選定した。ミニ遺伝子のin vitro スプライシング解析、およびSMA患者の線維芽細胞を用いた2つの系で、最終的な候補薬の「SMN2遺伝子エクソン7のスプライシング正常化」効果を測定した。近年、低分子化合物ではなく、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたSMN2遺伝子のスプライシング修正が提唱され(MacKenzie A. NEJM 366; 8, 761-763, 2012)、動物実験でSMAの症状を軽減できたと報告されている。現在、このアンチセンスオリゴヌクレオチドよりもスプライシング修正効率が良い治療薬が求められているが、今回の我々の研究では、低分子化合物A以上に、スプライシング修正効果が高く細胞毒性が低い治療薬として期待できる低分子化合物は見つけられなかった。
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