本研究は、IgA腎症患者における肉眼的血尿に伴う急性腎障害(AKI)の原因究明を目的としたものである。AKIの主原因が血尿に含まれる鉄であるとの仮説をたて検討を開始した。まず肉眼的血尿を伴うAKI症例の腎生検組織を用いて、その変化を光学顕微鏡で精査した。糸球体病変はいずれも軽度で、病変の中心は尿細管領域であった。次にAKI発症前後の組織を用いて鉄染色を行った。発症前には鉄陽性組織がほぼなかったのに対し、発症後には尿細管細胞内に有意に陽性像を確認できた。さらに尿細管培養細胞を用い、鉄の主要成分が実際に細胞死をもたらすことを確認した。
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