フィブロネクチン(FN)腎症は常染色体優性の遺伝性腎疾患として1995年に初めて報告された。症状は蛋白尿、顕微鏡的血尿、高血圧を特徴とし、その後慢性腎炎様の経過をたどり、発症から約15年の経過で末期腎不全に至る。しかし、現在有効な治療法は存在しない。診断は臨床像と病理学的所見にてなされ、遺伝子検査はほとんど行われていないのが現状である、そのため本疾患の遺伝子変異と表現型の相関について報告はなく、発症機序もいまだ明らかになっていない。2007年に本症の責任遺伝子としてFN1遺伝子変異が同定され、3種類の変異が同定されている。また変異株より作成された蛋白を用いた機能解析では、変異株はいずれもポドサイトへの接着能が低下することが確認された。FN1遺伝子変異が存在するとFNassemblyが障害され、糸球体基底膜の構成に利用されるべき可溶性FNの利用障害が起こり、不溶性FNと可溶性FNのバランスが崩れ、糸球体に可溶性FNが沈着するのではないかという仮説が立てられている。今回、我々はFN腎症患者におけつFN1遺伝子変異について明らかにすることを目的とし、FN腎症の遺伝学的検討を行った。対象は、病理学的にFN腎症と診断されている家系の患者およびその家族で方法は、末梢血リンパ球からゲノムDNAを抽出し、PCRおよび直接シークエンス法を用いてFN1遺伝子の解析を行った。結果、FN腎症患者において新規の変異を4種類発見したとともに、そのうち一つは従来変異が見られていたヘパリン結合部位ではなくインテグリン結合部位であった、次に、FN腎症の疾患発症機序を解明することを目的とし、同定し得た変異遺伝子の蛋白発現を行い、ELISA法や免疫染色を用いて変異蛋白の機能解析を行うこととした。
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