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2012 年度 実施状況報告書

TGF-β1溶出性グラフトによる先天性心疾患における肺循環

研究課題

研究課題/領域番号 24791067
研究種目

若手研究(B)

研究機関徳島大学

研究代表者

阪田 美穂  徳島大学, 大学病院, 特任助教 (80532514)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード肺高血圧 / 肺循環 / 平滑筋細胞 / TGF-β
研究概要

乳幼児の肺循環機能不全病態、とくに先天性心疾患症例においては肺動脈の低形成や出生後の循環動態に伴う肺循環障害の進行が、その予後に大きく影響していることが多い。術前術後および将来にわたって肺血管抵抗上昇や肺高血圧が心不全の原因として進行する場合もある。このような症例においては、肺血管組織は、血管内皮の肥厚、平滑筋細胞の増殖と遊走、叢状変化など肺高血圧に伴う病理学的変化、血管リモデリングが進行している。
肺動脈性肺高血圧は難病指定されており、予後が不良で臨床経過のなかでも、その加療に難渋することが非常に多い。近年では一酸化窒素吸入、Phosphodiesterase-5 阻害剤、エンドセリン受容体拮抗剤などの薬剤が開発され治療に一定の効果がえられているものの未だに根治的な加療の方法は見つかっていない。本研究では、先天性心疾患小児において、従来より最も頻繁に人工血管や補填物として使用されるexpanded polytetrafluoroethylene (ePTFE)を利用して、Transforming Growth Factor-β1(TGF-β1)溶出性グラフトを考案し、肺高血圧に対する臨床的、病理学的な有用性を検討することである。
現在は、肺高血圧ラットとそれから摘出した肺動脈平滑筋細胞の培養およびTGF-β刺激による血管平滑筋細胞の遊走、増殖などを観察している。実験開始当初に予想していたこととして、TGF-β刺激による肺高血圧への進展抑制と改善に関しては合致するような経過と結果が得られつつある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

先天性心疾患症例においては肺血管組織の異常、肺動脈の低形成や出生後の循環動態に伴う肺循環障害の進行が、その予後に大きく影響していることが多い。このような症例においては肺高血圧に伴う病理学的変化を来たし、臨床経過のなかでも、その加療に難渋することが少なくない。本研究では、先天性心疾患小児において従来より最も頻繁に人工血管などに使用されるexpanded polytetrafluo- roethylene (ePTFE)を利用したTransforming Growth Factor-β1(TGF-β1)溶出性グラフトを考案し、その臨床的有用性を検討することを目的とした。モノクロタリンを投与した肺高血圧ラットから採取した血管平滑筋細胞の培養において、TGF-βの投与が遊走、増殖の抑制に有用であるか否かを検討した。コントロールに比較して、TGF-βで前処置したものは肺動脈平滑筋細胞の増殖と遊走を抑制した。
最終的には小児の手術で最も頻繁に使用される従来より最も頻繁に人工血管や補填物として使用されるexpanded polytetrafluoroethylene (ePTFE)をプラットホームとして溶出することが可能なものとして肺全体へ同作用を行き届けさせることを考慮している。

今後の研究の推進方策

胎児牛血清やTGF-β1・PDGF・VEGFなどの増殖因子の添加の下で、細胞の遊走能・増殖能を検討する。サイトカインが血管内皮細胞、平滑筋細胞の増殖に関与することは既に多くの報告がなされているが、肺動脈に関してはその効果の報告は少ないため、本研究で確認することとする。
ePTFEにTGF-β1を吸収させ、徐放させるコーティングについて研究する。ePTFEは連続性小孔を有するポリマーであるため、容易に薬剤を吸収することが予想されるが、徐放されるにはトップコートの選択が重要と考えられる。プチルメタクリレートなどこれまでにステントからの薬剤溶出に使用されている薬剤の使用を考慮する。次に、ラット肺動脈にePTFEの補填を行う。このとき、肺動脈弁などを損傷すると、ラットの術後生存率の低下が予想されるため、肺動脈弁輪部を避け、主肺動脈に補填することが最も有用であると考えられる。このような外科的処置に関しては、当施設の心臓血管外科の協力を仰ぐことを計画しており、既に了解を得ている。

次年度の研究費の使用計画

人工血管などに使用されるexpanded polytetrafluoroethylene (ePTFE)を利用したTGF-β1溶出グラフトの作成とTGF-β1投与による肺組織・肺血管病理組織の変化を検討する予定である。おもな研究費使用は、プラットホームとしてのePTFEが持続的にTGF-β1を溶出させることができるか否かの実験とそれを可能とするような方法の検討である。
実験薬剤とePTFEを購入する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Left atrial volume change throughout the cardiac cycle in children with congenital heart disease associated with increased pulmonary blood flow: evaluation using a novel left atrium-tracking method.2013

    • 著者名/発表者名
      Sakata M, Hayabuchi Y, Inoue M, Onishi T, Kagami S
    • 雑誌名

      Pediatr Cardiol

      巻: 34 ページ: 105-112

    • DOI

      doi: 10.1007/s00246-012-0395-4.

    • 査読あり
  • [学会発表] Dual Doppler法を用いた拡張早期左室流入血流と僧帽弁輪運動の時相解析による左室拡張障害診断2012

    • 著者名/発表者名
      阪田美穂
    • 学会等名
      第48回日本小児循環器学会総会・学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都府)
    • 年月日
      20120705-20120707
    • 招待講演
  • [学会発表] 先天性心疾患小児症例におけるDual Doppler法を用いた拡張早期左室流入血流と僧帽弁輪運動の時相解析2012

    • 著者名/発表者名
      阪田美穂
    • 学会等名
      第23回日本心エコー図学会学術学術集会
    • 発表場所
      グランキューブ大阪(大阪府)
    • 年月日
      20120419-20120421
    • 招待講演
  • [図書] Mechanically Gated Channels and their Regulation2012

    • 著者名/発表者名
      Kamkin Andre
    • 総ページ数
      429
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2014-07-24  

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