Nod1リガンド誘発冠動脈炎モデルマウスは川崎病類似の冠動脈炎を来すモデルである。そのNod1リガンドを利用して、5週齢のApoEノックアウトマウス(ヒト動脈硬化類似マウスモデル)に冠動脈炎を1週間で引き起こし、その後無処置のまま冠動脈炎を完治させたところ、9週時点で動脈硬化巣の拡大を認めた。以上から、冠動脈炎を引き起こすことによって、動脈硬化が促進されるという結果が得られた。 この炎症を惹起するNod1リガンドによって、マウスの冠動脈にどのような遺伝子が発現しているかを病巣部のマイクロアレイ解析を行ったところ、Ccl5、Cxcl16などが高発現していることがわかった。さらに、組織の定量PCRでも同様のサイトカインの上昇を確認した。 本モデルにおいてCcl5が重要と考え、ApoEノックアウトマウスにNod1リガンドを少量投与しながら、抗Ccl5抗体を投与しCcl5の機能を抑制したところ、動脈硬化巣の増悪を抑制することができた。以上から、Nod1リガンド誘発の動脈硬化ではCcl5が重要な役割を果たすことがわかった。 また、Nod1・ApoEダブルノックアウトマウスを作成したところ、動脈硬化はApoEノックアウトと比べて有意に動脈硬化が抑制されており、常在菌叢などからNod1リガンドが放出され、それが動脈硬化へ影響することがわかった。この結果は、自然免疫Nod1と動脈硬化の関連性についての初の知見であった。
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