研究課題
CINCA症候群は、CIAS1遺伝子の異常によるIL-1βの過剰産生を原因とする重症の自己炎症性疾患である。慢性炎症は動脈硬化のリスク因子とされ,SLEや関節リウマチでは心筋梗塞のリスクが高いことが知られるが、CINCA症候群における動脈硬化を検討した報告はない。当科でも治験を始めた抗IL-1療法の前後の動脈硬化の経時的変化を、生理学的検査や生化学的バイオマーカーで評価し、本症候群の予後改善に貢献するとともに、炎症疾患としての動脈硬化の機序解明に寄与したいと考えた。当院通院中のCINCA症候群3例では、IMT, stiffness parameter β, baPWVは3例中3例で,ABIは2例で異常値であり,しかも年齢の高い症例ほど重症である傾向がみられた.抗IL-1療法の開始により、炎症反応は良好にコントロールされた。1年後の経過観察では、stiffness parameter βは改善がみられ、その他の検査も増悪はみられなかった。CINCA/NOMID症候群3例における動脈硬化の指標は5才というきわめて若年から異常値であり,しかも年齢の高い症例ほど重症である傾向がみられ、経年的に増悪してきたことが推測された。1年後の経過観察では、全体として少なくとも増悪はみられず、抗IL-1療法により、慢性炎症が比較的良好にコントロールされている結果と考えられた。本疾患では、乳児期早期からの慢性炎症のため,きわめて若年から動脈硬化を発症するものと考えられ,さらに成人期にはより重度となることが予想される.抗IL-1療法による特異的治療は、動脈硬化の観点からも患児の予後改善に貢献することが期待される。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、CINCA症候群における動脈硬化について、生理学的・生化学的バイオマーカーによる継時的評価を行うことにより、同症候群に伴う慢性炎症による若年からの動脈硬化の存在と、抗IL-1療法の慢性炎症ならびに動脈硬化に対する臨床的効果を確認することができた。
さらなる症例の集積、経時的評価を行うと同時に、生理学的バイオマーカーと生化学的バイオマーカーとの関連性についても解析を行い、慢性炎症による動脈硬化の機序解明に貢献したい。
次年度は、引き続き症例の臨床データを得るための補助検査、生化学的バイオマーカーについて測定するための試薬、解析データの発表に研究費を使用する予定である。
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Brain Dev
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10.1016/j.braindev.2012.10.008.
Int J Cardiol