研究概要 |
CINCA症候群は、CIAS1遺伝子の異常によるIL-1β過剰産生を原因とする重症の自己炎症性疾患である。一方、慢性炎症は動脈硬化のリスク因子とされ,全身性エリテマトーデスや関節リウマチでは心筋梗塞のリスクが高いことが知られている.また,家族性地中海熱では,動脈硬化の指標である頸動脈エコーでの内膜中膜複合体(Intima-Media Thickness, IMT)や,Stiffness parameter βが,小児期からすでに異常高値であることが報告されている.乳児期早期より難治性の慢性炎症がみられるCINCA症候群においても,動脈硬化のリスクもきわめて高い可能性があるが,動脈硬化の有無・程度について検討した報告は過去にない.当科通院中のCINCA症候群3例(5才, 7才, 15才)における動脈硬化の有無・程度を,IMT, stiffnessparameter β, baPWV, ABIといった,小児にも施行可能な非侵襲的手法を用いて検討したところ、3例ともに異常値がみられた。年齢の高い症例ほど重症である傾向がみられ、継年的増悪が示唆された。CRP, ESR、血清アミロイドA等の各種炎症パラメータと動脈硬化パラメータの相関を検討しところ、炎症パラメータの高い症例ほど動脈硬化も重症である傾向がみられ、炎症と動脈効果の関連性が示唆された。抗IL-1療法による特異的治療開始後2年間、生化学的、生理学的バイオマーカーの経時的評価を行ったが、少なくとも動脈硬化パラメータの増悪はみられず、抗IL-1療法開始による慢性炎症のコントロールにより、動脈硬化の進展も抑えられる可能性が示唆された。
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