研究課題/領域番号 |
24791076
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
入江 理恵 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90381178)
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キーワード | 脳・神経 / 脳神経疾患 / 細胞・組織 / 生理活性 / 解剖学 |
研究概要 |
Rett症候群(RTT)の原因遺伝子であるMeCP2遺伝子欠損マウス臓器の、生体レベルでの細胞の超微構造の変化や細胞レベルでの機能異常を明らかにするため、現有のMeCP2-/y雄マウスと野生型マウスの表現系(諸臓器組織形態)を比較した(in vivo)。MeCP2-/y雄マウスは、雄野生型(X+/Y)と雌Hetero(X+/X-)を交配・維持し、雄野生型、雄Hemi(X-/Y)、雌野生型(X+/X+)、雌Hetero が、いずれも1/4の確立で生じた。雄Hemi(X-/Y)マウスの脳あるいは「他」臓器を採取、各臓器の肉眼的所見や重量測定を行い、表現型の差異について統計的に解析した。また、表現型に差異が見られた臓器については、組織を凍結固定後に臓器特異的な蛋白あるいは遺伝子発現について光顕的に解析し、また、電顕的に形態解析するこにより、超微形態レベルでの決定的な差異を見出した。また、光顕レベルでの免疫組織化学的解析を重ね、ELISAを用いた臓器特異的産生物質の定量等を行い、MeCP2遺伝子とこれらの細胞・組織との関係を考察した。 これらのことから、RTTの病態やMeCP2の分子機能の解明には、脳だけでなく脳以外の臓器の解析が有効であると確信し、RTTの脳以外の臓器の組織学的・超微構造的な研究発表が国内外でも全くない点から、独創性も価値も高いと判断され、さらに研究を深めることで、予想される成果は「RTTの病態とMeCP2の分子機構の解明に全く新しい観点からの意義深い結果を生み出す」ものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進展に伴い、当初形態異常が見られた臓器の細胞に、MeCP2遺伝子とは全く関係のない遺伝子発現の変化が見られた。MeCP2遺伝子の発現異常が直接的にこの形態異常をきたしている他に、この遺伝子とMeCP2遺伝子との相互関係によって複合的に形態異常が起きている可能性が示唆された。また、この臓器の生理活性物質の変化も明らかになったことから、これらの臓器の相互関係について追加実験にてさらに検討を行う必要性が生じ、研究方針がやや変わったことにより当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
生体での形態比較、生理活性物質の比較だけでなく、培養細胞を用いたMeCP2遺伝子の役割について比較検討する(in vitro)。 表現系に超微構造的な差異が見られた臓器の正常培養細胞の、臓器特異的な生理活性について調べる必要がある。そのための手段として、RNAi法によりMeCP2遺伝子をダウンレギュレートさせ、細胞の増殖、形態及び産生物質等の変化について比較検討し、生体で見られた細胞レベルでの形態異常が、培養細胞系に反映するか解析する。そのため、Western blottingやqRT-PCR法などの分子生物学的な評価系が中心となり、細胞培養のための培地や器具、解析試薬や免疫染色に用いる抗体の購入に充てる。また学会発表及び国際論文投稿の準備も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進展に伴い、当初形態異常が見られた細胞においてMeCP2遺伝子と全く異なる遺伝子の発現変化が見られたため、形態異常がMeCP2遺伝子の直接的な影響か、あるいはこの遺伝子との相互関係によっておこるものか検討する必要が生じた。また、他の非神経系臓器の生理活性物質の変化も明らかになったことから、これらの臓器相互関係についてさらに解析するための追加実験等により、当初の予定より研究がやや遅延し、次年度使用額が生じてしまった。 上述の理由により、生体での形態比較、生理活性物質の比較だけでなく、表現系に超微構造的な差異が見られた臓器の正常培養細胞の臓器特異的な生理活性、あるいはそれと関係すると推測される臓器の培養細胞について調べる必要がある。そのための手段として、RNAi法によりMeCP2遺伝子をダウンレギュレートさせ、細胞の増殖、形態及び産生物質等の変化について比較検討し、生体で見られた細胞レベルでの形態異常が、培養細胞系に反映するか解析する。そのため、Western blottingやqRT-PCR法などの分子生物学的な評価系が中心となり、細胞培養のための培地や器具、解析試薬や免疫染色に用いる抗体の購入に充てる。また学会発表及び国際論文投稿の準備にも使用する予定である。
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