研究課題
横紋筋肉腫は小児で最も頻度の高い悪性軟部腫瘍で、二大亜型の一つである胞巣型では70%にPAX3-FKHR融合遺伝子が同定され、腫瘍化に寄与している。我々は、PAX3-FKHRと新規融合遺伝子PAX3-NCOA2の安定発現マウス筋芽細胞株を作成し、共通して発現の上昇している遺伝子としてRPS6KA1を同定した。本遺伝子はRAS-MEK-ERK経路の下流に位置し、増殖能や移動能を促進し、アポトーシスを阻害するキナーゼであり、既に阻害剤が開発されている。本研究では横紋筋肉腫におけるRPS6KA1の機能解析とRPS6KA阻害剤の新規分子標的療法薬としての使用の妥当性の評価を目的とする。RPS6KA阻害剤であるBI-D1870は、横紋筋肉腫細胞株の増殖を阻害し、RPS6KA1の発現量が高い細胞株ほど増殖抑制の程度が大きかった。細胞周期の解析では、BI-D1870処理によりG2/M期での細胞周期停止を認めた。RPS6KA1の阻害によりMyt1蛋白のリン酸化が減弱しており、これによりG2/M期での細胞周期停止をきたしたと考えられた。横紋筋肉腫細胞株に対するBI-D1870処理によりMyosin heavy chainの発現の増加を認め、筋分化の促進を認めた。以上より、RPS6KA1は横紋筋肉腫の治療標的と考えられ、新規分子標的と考えられる。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Oncogene
10.1038/onc.2013.491.