研究課題/領域番号 |
24791081
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
榊原 崇文 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60570075)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 限局性皮質異形成 / 難治性てんかん |
研究実績の概要 |
難治性てんかんの原因として、小児期に頻度が高い限局性皮質異形成(FCD:Focal cortical dysplasia)に焦点を当て、その発生病態およびてんかん原性獲得の病態解明を行う。FCDの発生には、遊走と分化の異常が想定されている。また、神経幹細胞の分化制御機構は、エピジェネティクス機構が関与し、時間的・空間的に厳密に制御されている。そこで、エピジェネティクス制御機構が、FCD形成および神経細胞機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。難治性てんかんの発生病態解明は、科学的根拠に基づいた治療の開発に発展することが期待できる。前年度に引き続き培養ヒト神経芽細胞 SH-SY5Yを用いた異形細胞形成の解析を試みた。研究①としてSH-SY5Yを10uM Retinoic Acid(RA)による分化誘導を行い、分化誘導の様々な時期にHDAC阻害剤として1.0mMあるいは0.6mM Valproic Acid(VA)の処理を加えSH-SY5Yから誘導された神経細胞の形態評価を試みた。SH-SY5Yは、細胞密度がその分化誘導中の形態に影響を与えており、VA投与時期間の正確な比較評価が困難であった。研究②としてGFAP発現ベクターを作成し、SH-SY5Yへトランスフェクションを行い、SH-SY5Yの分化誘導系における様々な時期にグリア細胞のマーカー蛋白であるGFAP発現による異形細胞形成の解析を試みた。現在、薬剤誘導性GFAPトランスフェクション安定株を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度の研究①について、SH-SY5Yの細胞形態評価を行う場合、SH-SY5Y細胞密度により、その分化誘導段階における神経突起の伸長が異なることがわかった。SH-SY5Y細胞に対してRAによる分化誘導を行い、様々な分化誘導時期におけるVAによる形態への影響を試みた。しかし、観察対象の細胞密度を一定にすることが困難であり、評価できなかった。そこで、RAによる分化誘導による形態評価を目的とした、至適細胞密度の評価のみを行うこととしたため、研究①の進行が遅延している。研究②について、Tet-On 3G Inducible Expression Systems (Clontech Laboratories, Inc)を使用して、培養ヒト神経芽細胞による異形細胞形成の解析を開始している。pCMV-Tet3Gと作成したGFAP発現ベクター(pTRE3G-ZsGreen1)をSH-SY5Yにトランスフェクションを2段階で行う必要がある。SH-SY5Yへは規定のprotocolでトランスフェクションされないため、様々な条件設定を試みている。一段階目のpCMV-Tet3GのSH-SY5Yへのトランスフェクションは確認できたが、安定したGFAP発現ベクターがトランスフェクションされたSH-SY5Y cell lineの作成に時間を要しており、研究②の進行が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、平成25年度に引き続き培養ヒト神経芽細胞SH-SY5Yを用いて、①分化誘導の評価に至適な細胞密度の設定を再度行う。②SH-SY5YへのGFAP発現ベクター導入について様々な条件(導入量、時間、トランスフェクション試薬など)設定調整を行って、安定したGFAP発現ベクターが導入されたSH-SY5Yを作成し、GFAP発現による異形細胞形成の形態及び機能解析を行う。さらにこれらの阻害剤(siRNAなど)による回復実験を行い、神経細胞分化過程におけるGFAPの関与およびエピジェネティクス機構の障害によるFCD形態形成の病態を明らかにする。そして、誘導された神経細胞間における機能的な違いについても解析を行い、てんかん原生形成の病体を解明する。てんかん原生形成の病体を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
GFAP発現ベクターをトランスフェクションしたSH-SY5Y安定株の作成に時間を要しており、そのSH-SY5Y安定株を使用した実験計画の進行に遅れが生じている。このため、次年度にその実験計画を実行するために必要な次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費は、主に細胞培養関連試薬、分化誘導およびヒストンアセチル化阻害などに使用する薬剤、ウエスタンブロッティングや細胞染色に使用する抗体(免疫組織学的試薬)、細胞への遺伝子導入に関わる試薬(遺伝子工学的試薬)などに対して使用する。研究成果が得られた場合は、その発表や論文校正にかかる費用の一部として使用する。
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