研究課題
てんかんの有病率は約1.0%、その約20%は小児期に発症する難治性てんかんである。小児難治性てんかんの原因病理として限局性皮質異形成(FCD)がある。その発生原因とてんかん原性獲得の病態は不明である。FCD IIbには、神経細胞とグリア細胞両方の特性をもつ細胞が存在し、胎生期神経幹細胞の分化異常が想定される。一方、神経幹細胞の分化制御機構は、エピジェネティック機構(Epi機構)が関与し、時間的・空間的に厳密に制御される。本研究は、①FCDにおけるEpi機構の関与を定性的に明らかにし、②グリア分化関連蛋白(GFAP)が、培養ヒト神経芽細胞(SH-SY5Y)の分化誘導過程で、Epi機構による神経細胞分化へ与える影響を明らかにすることで、難治性てんかん発症病態の解明と治療法の開発が期待できる。FCD病巣を対象とし、5メチルシトシンと5メチルシチジン抗体による免疫組織学的解析とマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行ったが、FCDにおけるEpi機構の関与について十分な解明には至らなかった。第3世代テトラサイクリン(Dox)によるGFAP発現誘導システムをもつSH-SY5Y安定細胞株の樹立を試みた。SH-SY5Y with pCMV-Tet3G安定細胞株(Tet3G細胞株)とDox誘導GFAP発現ベクター(GFAPベクター)を作成し、次にTet3G細胞株へGFAPベクターと選択マーカー遺伝子の共導入を行った。培養液やトランスフェクション試薬の種類・濃度・作用時間、FBS濃度、導入ベクター濃度の調整を行った。本研究では、Tet3G細胞株へGFAPベクターの一過性導入を確立したが、安定細胞株樹立には至っていない。一過性導入の確立により、GFAPが分化誘導前のSH-SY5YにおけるEpi機構へ与える影響の解明に期待できる。また、GFAPベクターを再編成し安定細胞株の樹立を進めている。
すべて 2015
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Pediatr Int.
巻: 57 ページ: 472-475
10.1111/ped.12509