研究課題/領域番号 |
24791083
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
門田 行史 自治医科大学, 医学部, 講師 (80382951)
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キーワード | プラセボ / ADHD / MPH / ATX / Go/NoGo / Oddball / fNIRS / prefrontal |
研究概要 |
本研究は、現時点では客観的に判別できるツールがない、小児注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断、治療効果判定法の確立を目的としている。小児脳機能障害であるADHDの中心病態は行動抑制機能障害、注意機能障害であり、それらの関連認知機能課題中に拘束性の低い、非侵襲的な脳機能検査法である近赤外線スペクトロスコピー(functional near-infrared spectroscopy)を用いてADHDの脳機能低下と薬物治療後の脳機能回復について検証した。 ADHD群において、治療薬物である塩酸メチルフェニデート(MPH)内服前には行動抑制機能と注意機能関連領域である右前頭前野の脳機能が、発達障害のない小児群(定型発達)と比較して統計学的に有意に低下し、MPH内服後に脳機能が回復した。プラセボ薬(偽薬)を使用した二重盲検試験を用いて、ADHD症状が顕在化する6歳前後の極めて多動性の強い小児ADHD症例に対して脳機能検査を成功させた世界で初めての報告である(Neurophotonics 2014, 日本薬物脳波学会雑誌2013,2014)。2013年度は4回の招待講演があり、発達障害全般にわたり、客観的な診断手法の開発ニーズが極めて高いと考えられる。 以上から、fNIRS計測を用いた我々の解析系は、小児発達障害を対象とした客観的なバイオマーカーの確立と、臨床応用に関するエポックになりうると考える。 現在までにADHD児150名、定型発達児100名、自閉症児50名の検査を実施した。今後は、個人個人の脳機能検査データを解析し、実臨床で応用可能な診断検査の開発や症状に合わせたオーダーメイド治療について検討する。さらに、自閉症児とADHD児の脳機能低下の異同について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定を上回り、小児注意欠陥多動性障害例(ADHD児)150名、定型発達児100名をリクルートし、脳機能解析を実施できている。結果、ADHDが有する行動抑制機能低下と注意機能低下が右前頭前野と頭頂葉にあり、治療薬である塩酸メチルフェニデート(MPH)を内服すると定型発達児のレベルにまで脳活動が回復し、プラセボ薬を内服しても回復がない事を報告した(2014年:Neurophotonics, 2013-2014年:日本薬物脳波学会雑誌、2013-2014年の招待講演は4回)。自閉症児(ASD)も50名リクルートでき、ADHD、定型発達児、ASDにおいて同じ抑制機能課題を実施し、ADHDにおいてのみ右前頭前野の機能不全を認めた。よって、本解析系を用いて抽出される右前頭前野の機能低下は、ADHDのバイオマーカーになりうると考えられる(未発表)。 今後の課題は、ADHDと定型発達児における、年齢に伴う脳成熟プロセスの異同に関する研究である。我々がリクルートした各対象者における計測から1年後の脳機能を縦断解析し、脳成熟プロセスについて検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、1年の間隔をあけて縦断解析を実施し、参加した対象者(合計300名)において発達に伴う脳活性パターンの変化を検討する。脳機能低下を伴うADHD/自閉症児の脳機能学的変化と定型発達児との異同を確認し、脳の成熟障害の有無やプロセスを解明する。また、ADHDについては治療薬であるMPHの効果あり/なしの集団に分類し、脳機能変化の異同を後方視的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、脳機能解析機器の消耗や破損、データ管理に必要な物品の補充を見込んでいたが、安全で適切な計測環境が確保されていたことから、消耗品の購入費が予想を下回る結果となった。 英文校正料、学会発表を目的とした旅費にあてる予定である。
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