研究課題
我々は、低拘束性な脳機能検査装置であるfNIRS用いて、小児ADHDに適合し、かつ、ADHDの病態解明に関与する研究をすすめてきた。その結果、ADHDの中心的病態に関与する「多動・衝動性の制御」を反映する認知機能課題中にfNIRS計測を実施し、小児ADHDの多動・衝動性や不注意症状に関わる脳機能低下領域が、右前頭前野(右中前頭回と下前頭回)にある事を可視化した。さらに、本計測システムは、約95%の小児ADHDに計測可能であり、かつ、個人レベルでADHDを高精度に弁別可能(感度83%)であることを実証した(特許出願中)。次に、ADHDの主症状である、不注意症状に着目した。オドボール課題という注意昨日課題を作成し、課題遂行中にfNIRS計測を実施した。結果、定型発達児では右前頭前野に加え、右頭頂葉の有意な活動を認めた。一方、ADHD児では治療薬内服前とプラセボ内服後には、全脳領域において有意な脳活動はなく、塩酸メチルフェニデート徐放薬(MPH)の内服後に右前頭前野の活動が強く作用した。また、アトモキセチン(ATX)内服後には右前頭前野と右頭頂葉の活動の両方が弱く作用していた。アトモキセチンの注意機能に関する薬理効果については、fMRI、脳波、PET、MEG、などの全脳機能検査を含めても世界で初めての報告である。MPHを服用した場合とATXを内服した場合、それぞれの薬特有の回復効果を可視化した。この結果については、現在推定されているモノアミン(ドパミン、ノルアドレナリン)ネットワークの脳内分布と、各薬剤の薬理作用から考察可能である。すなわち、MPHはドパミン系ネットワークを中心に作用し、ATXはノルアドレナリン系ネットワークを中心に作用していると考えられ、その結果は、薬理学的機序と一致し、脳内における治療薬の薬理作用機序の検証に光トポグラフィが有用である可能性が示唆された。
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http://ped-brain-lab.xii.jp/wp/