研究実績の概要 |
ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は未熟樹状細胞の性質を持つLCH細胞が異常に増殖し、組織破壊を起こす疾患である。LCHの病変には様々な炎症細胞が浸潤しており患者血清では炎症性サイトカイン、ケモカインの異常高値(サイトカイン/ケモカインストーム)が認められる。そのため樹状細胞に発現し病原体を認識するtoll様受容体(Toll-like receptor:TLR)が未熟樹状細胞の性質を持つLCH細胞に発現し、炎症性サイトカイン/ケモカインストームに重要な働きをしていると推定し研究を開始した。 平成24年度はLCH細胞におけるTLRについて解析し、LCH細胞ではTLR1,2,6,7,8の発現絶対量が増加し、病態形成に関与している可能性が考えられた。 平成25年度はより網羅的な情報を得るため、次世代シークエンサーを用いた全エクソン解析を施行するため検体の収集を行った。LCH細胞はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックからCD1a陽性細胞をレーザーマイクロダイセクション(LMD)により採取することとしLMDに最適な免疫染色を検討した。また正常細胞として患者の末梢血検体を収集した。 平成26年度はFFPEからのDNA採取を試みたが全エクソン解析で解析可能な質及び量ともに得られなかったためLCH病変に関しては新鮮凍結検体を収集し6検体を収集、うち5検体が全エクソン解析に十分な質及び量のDNAを採取できた。 平成27年度は5検体のLCH細胞、正常検体のペア検体で全エクソン解析を行った。TLRに遺伝子変異は認めなかった。既知のMEK1変異を3例に認め、BRAF変異は認めなかった。FFPEから得られたDNAでの解析を可能とするため標的領域を既知の変異及びその関連遺伝子、TLRに限定し、アンプリコン解析を行う方針としカスタムで解析系を立ち上げた。
|