研究課題/領域番号 |
24791085
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
長嶋 雅子 自治医科大学, 医学部, 助教 (70438662)
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キーワード | fNIRS / ADHD / WISC / プラセボ / ドパミン関連遺伝子 / CNV / 遺伝子多型 / 自閉症 |
研究概要 |
平成24年度にADHDの中心病態である抑制機能に関与する右前頭前野の脳機能変化を抽出し、治療薬である塩酸メチルフェニデート(MPH)を内服後に定型発達児と同様の脳活動変化(=正常化)を示し、プラセボ薬では変化が見られなかったことを報告した(Monden, Nagashima, et al.,2012)。平成25年度の実績は、ADHDの表現型として抑制機能障害に影響される衝動性や多動性に加え、注意機能障害による不注意症状が関与する脳機能学的モニタリングを実施した。ADHD児22名、定型発達児22名において検討し、注意機能関連領域に右前頭前野だけでなく、右頭頂葉の活動低下があることを報告した(Nagashima et al., 2014)。以上の結果は、ADHDの中核症状である衝動性、多動性、不注意をすべて網羅可能な脳機能学的モニタリングを実践した世界初の報告である。 その他、我々は、予定を上回る人数のリクルートが可能であった。当初は、平成24年ー26年度にかけて100名のリクルートを目標にしていたが、ADHD児を150名、定型発達児を100名程度がすでにリクルートでき、2名以上の医療者によるADHD診断、知能検査が終了している。以上から、今後の遺伝子研究課題に着手できる準備がなされたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ADHDの病態解明を目的に、ADHD児の表現型と病因遺伝子と脳機能学的結果の関連を検討する事である。我々は、ADHDの表現型である、衝動性と多動性が、右前頭前野の機能低下であることを平成24年度に報告(Monden, Nagashima, et al.,2012)した。本年度は、不注意症状が、右前頭前野と右頭頂葉の機能低下に関与すると報告(Nagashima et al., 2014)した。また、治療薬である塩酸メチルフェニデート(MPH)を内服後に脳機能が改善する事を報告した。現在、ADHDのもう一つの治療薬である、アトモキセチン(ATX)の薬理効果について、論文投稿準備中である。以上から、表現型と脳機能学的関連については、おおむね目標を達成していると考える。 一方で、遺伝子検査については、本年度以降の課題であるが、当初の予定よりもリクルート者が確保でき、ADHD児、自閉症児、定型発達児を合わせて350名のリクルートができている。よって、今年度から、遺伝子多型解析のサンプルを集めて解析を開始し、表現型と脳機能イメージングとの関連結果の抽出を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、ADHDの表現型と合併症を病因遺伝子と脳機能の病態との関連を解析し、診断、予後判定および適切な治療法の選択基準を作る事である。 ADHDの診断目的とする研究では、本年度、ADHDの中核表現型である衝動性、多動性、不注意について、症状プロファイルと脳機能イメージング結果の相関性について報告した(Monden, Nagashima, et al., 2012; Nagashima, et al., 2014)。これらの結果は統計学的に極めて頑健であるため、当初の予定を変更し、表現型と脳機能イメージング結果から判定可能なADHD疾患の予後判定基準を作る予定である。 ADHD治療については、ATXの効果判定について脳機能イメージングを用いた論文を投稿準備中である。抑制機能と注意機能に関与する別々の薬理効果を報告する予定である。本結果により、MPHとATXの薬理効果を脳機能学的に考察可能となり、当初の目的である薬物選択基準の作成をすすめる原動力となる。 さらに、当初の予定通り、リクルート者数が300名以上となったため、ADHDの遺伝子多型と脳機能イメージング結果の相関性の有無について継続して検討し、ADHDの病態解明に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費(リンパ球分離、DNA抽出試薬、細胞培養用試薬、PCRプライマー、シークエンス用試薬キットアレー、チューブ、チップ類)を購入予定だったが、脳機能イメージングの計測を中心に行っていたため、物品費の購入費が下回った。 次年度は遺伝子解析を中心に行うため、物品費(リンパ球分離、DNA抽出試薬、細胞培養用試薬、PCRプライマー、シークエンス用試薬キットアレー、チューブ、チップ類)にあてる予定である。また、英文校正や学会発表を目的とした旅費にあてる予定である。
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