乳幼児のテレビ・ビデオ(以下、TV)長時間視聴習慣と言語発達の遅れとの関連性が臨床や1歳6ヵ月児の集団調査で指摘されている。家庭での視聴行動を縦断的に把握して因果関係を探るため、8ヵ月の健常児22名の親に、日常見せているTV(まだ見せていない場合は児の近くで付いているTV)を家庭で20分間再生して児の様子を撮影し、1歳6ヵ月時に2時間再生して撮影することを依頼して、撮影記録から対象児と同室者の行動を秒単位で書き起こした。 8ヵ月時の観察時間中の総注視時間割合(TVの模倣や質問などの関連行動で視線がTVから逸れていた時間を含む)は10.6~ 98.2%、平均61.2%で、約8割が観察時間の50%以上を視聴していた。1回の注視時間は平均13.5秒、最長注視時間は平均103.5秒で、8ヵ月で既にじっと見続ける子どもが少なくないことが示された。 総注視時間は非視聴時の親への働きかけと相関していた。現在の視聴習慣、生後からTVがついていた時間や一人視聴していた時間との関連は認められなかったが、TVを見せ始めた月齢が早い方が長い傾向がみられた。児が自力では移動し難く、手元に玩具が無かった場合に特に長く視聴しており、児の行動と再生した番組との照合から、人が画面から働きかける場面(成人で脳活動の上昇が計測されている)や音声の変化時によく見ることが示された。1歳6ヵ月時の記録は解析中であるが、注視時間の8ヵ月時との関連性、長時間視聴習慣と言語発達の遅れとの関連傾向が示されている。 生得的に言語・社会性の発達が遅れ易い子どもが長時間視聴し易いという説があるが、上記の結果はTVがついていると、内容、視聴環境により、多くの子どもが生後8ヵ月でもTVを見続けることを示している。視聴中はコミュニケーションが質・量とも減少するので、長時間視聴習慣と言語発達の遅れとの因果関係を支持する重要な結果である。
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