研究課題/領域番号 |
24791092
|
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
岸 勘太 大阪医科大学, 医学部, 助教 (20408503)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ダウン症候群 / 肺高血圧 |
研究実績の概要 |
肺高血圧症は、特発性あるいは先天性心疾患などを原疾患として、肺動脈圧が上昇した病態である。肺動脈の閉塞性病変を主体とし、右心不全の進行により予後不良の転帰をとる。病理学的には、中膜肥厚、内皮細胞の異常増殖、内膜肥厚、小動脈の筋性化、血栓、外膜肥厚、炎症性細胞浸潤を認める。近年、小児肺高血圧症の治療法が確立されつつあり、種々の治療法が考案されている。しかし、本病態の根本的治療までには至らず、さらなる創薬を含めた治療戦略も重要課題である。 21番染色体3倍体を伴う染色体異常症であるダウン症候群は、先天性心疾患を伴いやすい。さらに先天性心疾患を有するダウン症患者では、肺高血圧症を合併することが知られている。すなわち、ダウン症候群は、肺高血圧症の危険因子でもある。しかし、ダウン症候群の肺高血圧症の進行メカニズムについての研究は皆無である。本研究では、ダウン症モデルマウスにおいて、肺高血圧症の危険因子の探索を試みる。現在の進行状況は、下記の通りである。 1)肺血管内皮細胞におけるBMPR2情報伝達の検討:正常ヒト肺微小血管内皮細胞(HMVEC-L)を用いて、遺伝子発現実験を行う準備を進めている。ダウン症候群特異的遺伝子DSCR (Down syndrome critical region)および原発性肺高血圧症の責任遺伝子BMPR2 (bone morphogenetic protein receptor)をCMX発現ベクターに組み込み、その発現を確認した。 2)ダウン症モデルマウス実験:ダウン症モデルマウス(Ts65Dn)を購入し、低酸素暴露により肺高血圧症疾患モデルを作成する準備を進めている。またマウスから肺血管内皮細胞を単離し、初代培養を行う準備を進めている。まず、正常マウスから肺血管内皮細胞を単離する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「肺血管内皮細胞におけるBMPR2情報伝達の検討」の実験において、DSCR遺伝子およびBMPR2遺伝子発現ベクターの発現確認に時間がかかってしまった。また、動物実験において、心機能検査の準備に時間がかかってしまった。今後、培養細胞実験および動物実験は、次年度に継続して行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
1)肺血管内皮細胞におけるBMPR2情報伝達の検討 正常ヒト肺微小血管内皮細胞(HMVEC-L)を用いて、DSCR過剰発現実験を行う。そして、情報伝達物質(BMP、BMPR2、Smad1/4/5/8)の発現をPCR法およびWestern Blot法にて検討する。予備実験として、肺動脈モデル動物より、肺血管内皮細胞を単離し、初代培養を行う。 2)肺高血圧モデル動物実験 8週齢雄マウス(Ts65DnおよびC57/BL6)を低酸素に暴露し、肺高血圧症モデルを作成する。6週間後に心機能検査などの検討を行う。さらに予備実験として、肺動脈モデルラットにて、同様の心機能検査を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験試薬の購入について、以前の試薬を使用したため、次年度使用額が生じた。必要備品の支払いが次年度になったため。また、研究期間が1年延長したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度研究費(合計175万円程度)の内訳は、分子生物実験試薬代75万円、培養細胞試薬代30万円、動物購入および飼育代30万円、校正謝金・その他20万円の予定である。今回、培養細胞のたんぱく質発現実験の準備および動物モデル作成が少し遅れているため、これらの分子生物実験試薬(含む抗体)および動物飼育費用に充当する予定である。
|