研究課題/領域番号 |
24791093
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
辻 琢己 摂南大学, 薬学部, 講師 (90454652)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 免疫学 / 糖尿病 / FTY720 |
研究概要 |
申請者は,1日4~5回の自己注射が必要な1型糖尿病を経口剤のみで治療する新しい治療戦略の構築に関する基礎的研究を行っている.既に,1型糖尿病モデル動物(NOD)マウス)に対する2種の経口剤(新規免疫調節薬FTY720(フィンゴリモド)(0.1 mg/kg)と経口血糖降下薬シタグリプチン(0.1 mg/kg))を用いた併用療法の有用性を明らかとしている.本申請課題では,この併用療法を適用できる病勢(残存インスリン分泌能)を検討した. 糖尿病を発症したNODマウスを,発症直後から治療を開始する群(直後群;n=6),空腹時血糖値が200~299mg/dL(200開始群;n=2),300~399mg/dL(300開始群;n=2),400~499mg/dL(400開始群;n=3)及び500mg/dL以上(500開始群;n=2)に達した後,治療を開始する群に分け治療効果を調べた.その結果,治療開始時の空腹時血糖値が400 mg/dL未満であれば,適応できる可能性が示された.なお,各群の治療開始後10週までの生存率は,直後群83%,200開始群(50%),300開始群(50%),400開始群(33%)及び500開始群(0%)であった. この併用療法で膵β細胞の機能を維持できれば,血糖コントロールが可能になると予想された.そこで,各群の血糖値を測定した.その結果,直後群及び200開始群の生存個体では良好な血糖コントロールが得られていた.また,これらの個体では,膵β細胞がFTY720によって保護されていると考えられた.これを明らかとするため,膵臓のパラフィン切片を作製しヘマトキシリン・エオジン染色を行った.その結果,膵島炎スコアは,いずれも未発症個体レベルに維持されていた.今後,例数を増やし,本結果の確度を高めると共にFTY720及びシタグリプチンの適切な用法・用量を検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請課題では,自然経過で糖尿病を発症したNODマウスを用いている.従って,NODマウスの糖尿病発症率が研究の進行を左右する.今回用いたNODマウスの発症率は約44 %であり,研究計画で記載した適切な用法・用量を検討するための個体を確保できなかった.一方,本併用療法の適用可能な病勢(病期)の検討については,「研究実績の概要」に記載したように,例数は少ないが,空腹時血糖値が300 mg/dL未満であれば良好な血糖コントロールが可能であることを見出しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,主に本併用療法を適用できる病勢について生化学的及び組織化学的に検討した.また,平成25年度に実施予定のFTY720によるM2マクロファージの誘導に関する研究の予備的研究も実施した.即ち,C57BL/6マウスにチオグリコール酸培地を腹腔内投与して得られた腹腔マクロファージをlipopolysaccharide(LPS)およびリン酸化FTY720存在下あるいは非存在下で培養した.続いて,マクロファージ由来mRNAを抽出し,TNF-α(M1マクロファージのマーカー)およびarginase I(M2マクロファージのマーカー)の発現量をquantitative real-time PCR法を用いて解析した.その結果,研究計画で予想していたように,高純度のマクロファージが十分に得られなかった.そこで,平成25年度は骨髄由来マクロファージを採取し,同様の研究を行う予定である.これにより,FTY720の病変部位へのトラフィッキング抑制以外の新たな作用機序を明らかとする. 同時に,適切な用法・用量の検討も行い,本併用療法を臨床に提案できる基礎的データを集積する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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