研究課題/領域番号 |
24791094
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
原 宗嗣 久留米大学, 医学部, 助教 (30389283)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | レット症候群 |
研究概要 |
研究の目的:レット症候群(RTT)はMeCP2遺伝子変異を主因とする小児の中枢神経障害であり、その発症機構の解明や治療法の開発が切望されている。これまで申請者らは、RTT患者では、神経内分泌ペプチドホルモンであるグレリン血中濃度が、健常者との比較、食行動や排便障害に相関して低下することを見出した(Hara et al., Int J Dev Neurosic‘11)。しかしRTT患者におけるグレリン低下の原因や病態との関わりは不明である。そこで本研究は、RTT病態モデル動物やES/iPS細胞モデルの利用により、RTT病態メカニズムの解明や新規治療法を開発することを目標としている。 研究結果の概要:グレリンの発生過程における役割に付いては不明である。そこで、ES細胞やその分化過程におけるグレリンならびに、レセプター発現をRT-PCRによって解析した。その結果、グレリンとグレリンレセプターは、RTTモデルES細胞とコントロール(wild-type; WT)ES細胞で同様に発現し、ES細胞ならびに胚様体分化過程を通して発現していることを見出した。更に、三胚葉の形成過程にグレリンを添加し、RT-PCR法にて各種マーカー発現(20遺伝子以上)を調べた。グレリン添加による分化マーカーの変化はとらえられていない。一方、当科において繁殖・維持しているRTTモデルマウスからMeCP2を欠損するiPS細胞の樹立を試みた。その結果、種々の未分化マーカーを発現するWTとMeCP2欠損iPS細胞クローンを少なくとも4クローンずつ得る事に成功した。 現在、RTTモデルES細胞とコントロールで発現の異なる遺伝子を中心とした病態メカニズムの解析や、ES細胞と同様に、RTTモデルiPS細胞におけるグレリンやレセプターの発現を解析し、グレリン添加の分化へ及ぼす影響を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レット症候群モデル動物並びにES細胞は、本施設で維持できており、これらの実験材料を用いた研究が継続的に実施できている。実際に動物モデル由来のiPS細胞の樹立に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに研究に必要な細胞などの材料を得ることができているので、これらの材料を生かして、研究を継続する。現実的にはレット症候群モデルiPS細胞の神経分化誘導を行い、グレリンの神経分化に及ぼす影響を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な設備は整備されているため、購入を予定する設備・備品は無いため、主な使途は以下の消耗品となる。1)RTTモデルiPS・ES細胞の培養維持、分化誘導に必要なiPS・ES細胞培養試薬として、厳選された血清や、培養液、フィーダー細胞、リコンビナント増殖・分化因子、培養補助添加剤が必要である。2)RTTモデル動物の維持や、その他の動物による動物実験モデル作製のため実験動物維持費が必要である。3)RTTモデルiPS・ES細胞や動物を利用してPCRやDNAチップ、解析キットによる分子生物学的な解析を行なうための分子生物学実験試薬、及び、ウエスタンブロット、免疫組織染色を行なうための抗体などの試薬を購入する免疫組織学実験試薬費が必要である。その他、上記の消耗品購入費に加えて、得られた成果を随時、学会・論文にて発表を行なうための調査研究旅費、英語論文校閲費、研究成果投稿費等が必要となる。以上の様に、申請する研究経費は研究規模・体制を踏まえて妥当かつ必要と考えられ有効活用する。
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