研究概要 |
レット症候群(RTT)はMeCP2遺伝子変異を主因とする発達障害であり、その発症機構の解明や治療法の開発が切望されている。これまでに申請者は、健常者と比較して、RTT患者でグレリン血中濃度が食行動や排便障害に相関して低下することを報告している。しかしRTT患者における病態とグレリン低下のメカニズムは不明であり、本研究はRTTモデルマウスやES/iPS細胞の利用により、RTT病態メカニズムの解明や新規治療法を開発することを目的としている。 前年度までに、ES細胞の胚様体分化過程にいて、グレリンならびに、グレリンレセプターが発現することを明らかにした。また、RTTモデル(MeCP2欠損)ES細胞とコントロール(wild-type)ES細胞の胚様体形成過程にグレリンを添加し、種々の分化マーカーの発現を確認した結果、RTTモデルES細胞とコントロールES細胞の分化過程で発現の異なる分化マーカーを見出した。しかし、2群間においてグレリン添加で変動する分化誘導に影響する因子は未だ同定できていない。 そこで、本年度は、RTTモデルES細胞に特異的変化がみられることを偶然発見した分化系統のマーカー分子の関わる組織についてRTTモデルマウスに対する解析を進めることにした。その結果、自律神経系の機能異常に関連する臓器の機能的な異常を見出した。現在、RTTモデルES細胞による異常の認められた臓器の分化過程の解析を進めることで、MeCP2の標的臓器における機能的な役割の解析を進めている。 また、グレリンのレット症候群における成長障害と血中GH, IGF-1との関連性や、てんかんと知的障害をもつレット症候群のケースにおける血中グレリン濃度を調べるために、てんかんと知的障害を合併するレット症候群女児22例と年齢を適合させたてんかんと知的障害をもつ女児14例における、血中グレリン、GH, IGF-1濃度、各種身体測定値(体重、身長、BMI, 頭囲)について比較検討した。
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