研究課題/領域番号 |
24791095
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
日暮 憲道 福岡大学, 医学部, 助手 (40568820)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | てんかん / 女性 / 遺伝子 / iPS細胞 / 疾患モデル動物 |
研究概要 |
本研究は、患者由来iPS細胞と疾患モデルラットを用い、PCDH19関連てんかん(旧病名: 女性に限定されるてんかんと精神遅滞)の分子細胞レベルでの発症病態の解明を目指すものである。 H24年度は患者由来iPS細胞を1例から樹立、クローン選択をすすめ、また、分化神経細胞でのPCDH19発現について検討した。PCDH19発現は、細胞間の差異はあるものの多数の細胞で発現しており、特に樹状突起(分岐部、肥厚部、棘など)や細胞体などに認められた。 PCDH19ノックアウトラットの作成も同時に進めているが、H24年度終了時点ではまだ個体は出来ていない。 その他PCDH19関連分子の同定のため、タグつきPCDH19 cDNAをHela細胞やSHSY5Y細胞などに発現させ免疫沈降実験を試みたが、候補分子の同定には至らなかった。このため酵母のツーハイブリッド法による同定を試み、現在多数の陽性遺伝子が同定されたため、来年度は引き続き、同定された遺伝子の絞り込みと、その関連分子としての妥当性を検討する実験を継続していく。 さらにH24年度は臨床的検討もすすめ、10例の新規患者を同定した。これまでに同定した症例の臨床的見地からは、炎症機序などがてんかんの発症、あるいは修飾因子に関わっている可能性が示唆されたため、現在精力的に患者血清や髄液などを用いて、免疫病態の解明を進めている。 本題とは別であるが、PCDH19関連てんかんと臨床的に類似したドラベ症候群と言われる、乳児期発症難治てんかんについて、患者由来iPS細胞を樹立し、種々の検討から電気生理学的異常の同定に成功し、今後のてんかんの病態研究に、患者由来iPS細胞が有用であることを示すことが出来たことは、非常に有意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初順調にいくと予測していたiPS細胞のクローンの選択と疾患モデルラットの作成が予想外に困難であった。 特に前者については、樹立したiPS細胞クローンの分化傾向が強く、神経分化効率が悪いラインが大半であったことに加え、クローン毎にX染色体の不活化が父方アレル、あるいは母方アレルに偏っているラインを探索してきたが、RNA発現や免疫染色の検討からはクリアに分別できなかった。 また、モデルラットの作成はTALENを用いているが、上手く遺伝子破壊に至らず、ラット個体の誕生に至っていない。 その他の実験計画についてもクリアに結果がでないこのが多く、実験手法の再検討が必要な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後もiPS細胞のクローン選択や疾患モデルラットの作成は継続していくが、iPS細胞の再樹立には時間もかかることから、まずはモデルラットの作成と、現在中途段階である酵母ツーハイブリッドにより選別された候補遺伝子のさらなる絞り込みと、その妥当性の検討を中心に進めていく。 さらに、実際の症例の臨床的検討と、血清や髄液などを用いた免疫病態の解明については、今後適切な治療を検討する上でも大変重要であるため、積極的に進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
疾患モデルラットの作成と、個体が完成した場合の飼育費用、さらに生化学的、免疫組織学的、電気生理学的実験の費用にあてる。また、PCDH19関連分子の同定に関わる、生化学的実験の費用や、患者検体の免疫学的、免疫組織学的検討などに関わる費用についても充当する。 繰越金が生じた理由はラットの個体がまだ出来ていないためである。H25年度の研究費は主にラット作成・飼育費用と、iPS細胞培養に関わる培地・ディッシュなどの消耗品、生化学実験・免疫組織実験などに必要な試薬・抗体・消耗品などに充当する予定である。また、患者検体の検査費用などにも一部利用する。
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