研究課題/領域番号 |
24791095
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
日暮 憲道 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40568820)
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キーワード | てんかん / 女性 / 遺伝子 / iPS細胞 / 疾患モデル動物 / 免疫 / 脳血液関門 |
研究概要 |
本疾患の責任遺伝子、PCDH19はX染色体上にあるため、iPS細胞を樹立した場合、そのクローンのX不活化状態は重要であり、アンドロゲン受容体遺伝子をメチル化感受性制限酵素で切断し、PCRを行うことによって解析が可能である。H24年度にも樹立クローンについて解析を行い、PCDH19発現をみたが、結果が矛盾していたため、H25年度には再度新たなクローンを選択し、細胞性質の解析と神経細胞分化高率を検討した。最終的に不活化が生じたX染色体が母由来であるクローンと、父由来であるクローンとをそれぞれ2クローンずつ選択し、分化神経細胞のPCDH19発現を遺伝子(定量PCR)、蛋白(免疫染色)レベルそれぞれで確認したところ、多少の差はあったが、いずれのクローンでも発現が認められた。ドナー患者は父方由来アレルに変異が存在するため、母由来Xが不活性な細胞では正常なPCDH19の発現は極めて低値であるはずであるため、おそらくX不活化が完全に均質ではないためと考えられるが、これについて今後の検討が必要である。また、関連分子探索の目的で昨年から進めていた酵母のツーハイブリッド法も、現時点で有意義な結果は得られていない。一方、ノックアウトラット作成も当初から他施設へ依頼し進めているが、TALENによる遺伝子切断が上手くいかず個体は得られていない。 このような中で、昨年に引き続き、本邦患者の臨床的観点から疾患病態を分析していたところ、免疫治療の有効性や抗神経抗体が高率な検出が認められており、臨床症状とあわせ、炎症や脳血液関門障害が極めて強く病態へ関与していることが示唆されてた。さらに、海外からの論文報告の所見から脳血液関門におけるPCDH19発現や、炎症機序の関与によりその発現レベルが変化する可能性が示唆され、今後はiPS細胞の使用に関わらず、この点を中心に解析を進めていくことが重要と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
H24年度から施設の異動があり、しばらく実験が出来なかったことが要因である。さらに当初順調にいくと予測していた疾患モデルラットの作成が困難であり、肝となる解析が出来ていないことや、iPS細胞のクローン選択に予想外の時間がかかり、前述の通り論理的に結果が出なかったことも原因である。実験手法の再検討が必要な状況であるが、前述の通り可能性の高い新たな病態仮説が考えられたため、今後は実験の報告性を変更していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
炎症や血液脳関門とPCDH19の関与を中心に解析を進めて行く予定である。具体的には血液脳関門に関わる細胞(脳血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイト)や白血球におけるPCDH19の発現を、炎症性刺激に伴う変化も含め解析することを検討していく。さらに患者白血球ゲノムのエピゲノムや、RNA発現解析を行い、病態へ関与する要因を探る。また、可能であれば、患者iPS細胞から脳血管内皮細胞への分化を試み、in vitroにおける患者血液脳関門モデルの樹立を試みる。ただし、現在脳血管内皮細胞への分化方法の論文報告はあるが、他研究者の経験では、実際に再現出来ていない。疾患モデルラットの作成は継続していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越金が生じた理由は前述の通り、所属施設の異動に伴い、仕事内容ならびに研究環境が大きく変化し、しばらく研究が停滞していたことが最大の要因である。また、モデルラットが出来ず、細胞の解析が当初の予定より進んでいないことが原因である。しかし現状として、疾患病態が当初考えていた脳神経細胞そのものというより、それ以外の部分にある可能性が急速に高くなってきたため、急遽研究計画を変更していく必要がある。 H26年度の研究費は主にiPS細胞や脳血液関門に関わる細胞の培養に関わる培地・ディッシュなどの消耗品、免疫組織実験、遺伝子発現やエピゲノム解析などの生化学実験などに必要な試薬・抗体・消耗品などに充当する予定である。
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