本年度は、昨年度から本疾患の新たな病態仮説として考えている炎症と血液脳関門障害の関与についてさらに深い検討を行ってきた。その結果、患者のてんかん発作群発状態が、一時的にではあるが副腎皮質ステロイド投与により高率に抑制されることを同定し、さらに神経構成成分に対する自己抗体が患者群で高率に検出され、併せて血液脳関門病態の関与があると考え論文報告を行った。この病態の存在を確認するため、脳血液関門構成要素である脳血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイトの初代培養細胞におけるPCDH19の発現を解析した結果、ラットやヒトの脳血管内皮細胞における発現を、遺伝子レベル、タンパクレベル(免疫染色、ウエスタンブロット)で確認した。一方、脳血液関門障害の成立には白血球の要素も大きいと考えられるが、本疾患にみられる疾患重症度の決定に影響する因子の同定にもつながる可能性を期待し、重症度の大きく異なる一卵性双生児症例の白血球ゲノムの網羅的メチル化解析を行った。現在、双胎間で有意差の認められた遺伝子を検討中である。本年度の最も大きな成果は、当初の目標であったPCDH19ノックアウトラットが樹立されたことである。海外のグループは既にPCDH19ノックアウトマウスを作成しているが、てんかん発作は起こしておらず、行動解析もほぼ全て正常であったことから、ラットでの解析は重要と考えられる。現時点ではまだ繁殖中を中心に行っているが、今後脳血液関門の解析を含め、多方面からの解析を行っていく。
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