研究概要 |
本研究の目的は、次世代シークエンス(NGS)とマイクロアレイcomparative genomic hybridization (CGH) に代表される次世代遺伝子解析技術を用いて、性分化疾患(DSD)の原因遺伝子の検出および機能の解明を行うことである。 平成24年度は、実験計画に基づき合計141例の解析を下記の通り行った。 (1) 重度の外性器異常を伴う46,XY DSD/46,XX DSD (n=47):既知DSD責任遺伝子と候補遺伝子計120を対象とするターゲットエンリッチメント、および、全ゲノムCGHを行った。NGSの陽性対照として、4例の既知変異陽性患者を同時に解析した。(2) 比較的軽度の外性器異常を伴う46,XY DSD (n=95):既知DSD責任遺伝子と候補遺伝子計20を対象とするアンプリコンシークエンスをおこなった。 結果は下記の通りであった。(1)NGSでは、62種類の遺伝子変異が同定された。変異の約80%が直接塩基配列決定で再現可能であった。陽性対照の変異はすべて検出された。8例において病的意義が明確な既知遺伝子変異(AR, SF1, SOX9, BNC2)が、29例で候補遺伝子の変異が同定された。CGHでは4例の染色体微小欠失が検出された(DMRT1を含む9番染色体2例、2番染色体1例、20番染色体1例)。(2) 2例で既知遺伝子変異が3例で候補遺伝子変異が検出された。 本研究では、次世代遺伝子解析技術が、遺伝的異質性を有する疾患の変異スクリーニングに有用であることが明らかとした。重症度の異なるDSDにおける既知遺伝子変異の寄与が明確となり、DSD発症におけるoligogeneityの可能性および既知遺伝子変異による表現型の多様性が見出された。なお、CGH解析の成果については、現在科学論文に投稿中である。
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