研究課題
第一に、本年度では、BDNFが関与する新たな脆弱因子の探索などを行い、初代培養神経細胞へのBDNFの投与によって脂肪酸であるパルミトレイン酸が特異的に増加することを見出した。今後はこのパルミトオレイン酸がストレス脆弱性に関与する可能性を調べる必要がある。第二に、ステロイド骨格を持つホルモンの一部がコレステロール合成系の阻害活性を有するという報告から、化合物として同じ骨格を持つストレスホルモンが神経細胞のコレステロール合成を阻害する可能性が示唆されたため、これを実験により検証した。その結果、ストレスホルモンであるコルチコステロンには、BDNFによるコレステロール合成を阻害する活性がないことが確認された。この結果より、初ストレスホルモンがコレステロール合成の阻害を介してシナプス形成を阻害することはないと考えられた。第三に、幼児期神経細胞のストレスを高感度に検出するアッセイ系を構築するため、人工蛋白質プローブの作成を行った。神経細胞は障害を受けると、細胞内カルシウム濃度が上昇し、カルパインなどのカルシウム依存的プロテアーゼが活性化する。そこで、カルパイン活性の上昇を検出し、その情報をレポーター遺伝子に伝達することのできる人工蛋白質を複数作成した。そして培養細胞を用いた検証実験を実施する中で、カルパイン活性依存的にレポーター遺伝子の発現を実際に誘導できる人工遺伝子の作成に成功した。今後は神経細胞にこのシステムを導入し、神経細胞のストレスを感知できるかどうかを確認する必要がある。
2: おおむね順調に進展している
二つの仮説検証実験のうち、一方の進捗がやや遅れているが、他の一方の検証は終了した。加えて、脆弱性因子の探索や新しい神経細胞のストレス検知プローブの作成の研究は予想より進展している。
今後は、昨年の研究で進展が見られた新しい神経細胞のストレス検知プローブの作成に力を入れると同時に、その他の研究目標の達成を目指す。
主に消耗品に使用・細胞培養に必要な試薬、動物の購入、作成、輸送及び飼育、生化学実験及び分子生物学実験の試薬等旅費・日本神経化学会への参加等
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