血小板減少性紫斑病ITPなどの自己免疫疾患を合併した母体、もしくは不規則抗体やABOやRh抗原などによる血液型不適合妊娠は、地域の周産母子センターに集積される。これらの母体から出生した新生児はしばしば血小板減少や溶血性黄疸を来たすことがあり、頭蓋内出血や核黄疸など重篤な合併症の危険性がある。しかしながら病勢を予測する因子は特定されておらず、ただ新生児を慎重に経過観察をするしかない。今回の研究では、血球貪食機能を有する単球やマクロファージのFcレセプターの促進的・抑制的機能のバランスに着目した。出生児の臍帯血を測定することで、病勢の予測因子のひとつを見出す可能性がある。 研究対象となる合併症妊娠から出生した新生児は当施設のみならず多施設からも集積した。それぞれの施設では研究内容について倫理審査の承認を受けている。出生前には母体の鑑別疾患や薬剤などの治療経過、血液検査結果などの情報の収集を行った。出生時に臍帯血を採取して診療で必要な検体の余剰分を今回の研究に使用した。蛍光抗体を用いたフローサイトメーター解析、磁気ビーズを用いたCD14陽性単核球分離とmRNA採取を採取日に行う。同時に血漿保存も行い抗体価や増殖因子の測定に備える。いずれの実験系も当研究グループの大学院生および技術職員は精通しており、速やかに遂行する体制が構築されている。新生児の出生後の血液検査の推移や治療経過などの情報を収集した。集積した解析結果と出生前後の臨床情報との関連を統計学的に解析して、予測因子を検索した。 ITP合併や不規則抗体陽性例いずれにおいても正常コントロールと比較して、FcγR2A/2Bのバランスが高く、抑制機能を有するFcγR2B発現が低いことが示された。今後は血小板減少例や双発黄疸例においてのバランスの相違、治療経過による変化が観察する必要がある。
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