研究課題/領域番号 |
24791124
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
菅沼 広樹 順天堂大学, 医学部, 助教 (60568004)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 極低出生体重児 / 慢性肺疾患 / 脂質 / 栄養 / 脂肪酸 / リポ蛋白 |
研究概要 |
2010年4月から2012年1月に当院に入院した極低出生体重児を検討した。慢性肺疾患の有無により2群(慢性肺疾患群:CLD群n=13、正常群:CT群n=45)に分け、退院時(平均在胎週数39週)の血清を用いて、リポ蛋白プロファイルを比較検討した。慢性肺疾患の定義は修正週数36週になっても酸素を必要とすることとした。栄養法は退院時までの総経腸栄養に占める母乳率で検討した。リポ蛋白プロファイルは高感度ゲル濾過法を用いて、各リポ蛋白のサイズにおけるコレステロールおよび中性脂肪含量を測定した。CLD群ではCT群と比較して出生児週数と体重が優位に低値であった。リポ蛋白プロファイルはVLDL、HDL、LDLすべてにおいて両群間でコレステロール、中性脂肪含量に差を認めなかった。また、栄養法ではCT群において優位に母乳率が高値であった。 これまでにリポ蛋白と慢性肺疾患について検討した報告はない。そのため脂質が慢性肺疾患に影響しているかは不明であった。今回の検討からリポ蛋白が慢性肺疾患に与える影響は少ないものと考えられる。さらに、リポ蛋白は内部にコレステロールや中性脂肪を含みその運搬に関係している。プロファイルによりリポ蛋白中のコレステロール、中性脂肪含量にも差がなく慢性肺疾患との関係は少ないと考えられる。 脂質はサーファクタントの構成成分になるなど肺の成長にとって重要な役割を果たす。早産児の慢性肺疾患の改善にとって栄養は必要不可欠である。今回の検討ではCLD群では母乳率が優位に低くかった。しかし、血清のリポ蛋白プロファイルに差はなく、コレステロールや中性脂肪の脂質輸送としてのリポ蛋白は慢性肺疾患への関与は少ない。このことから、脂質の中でも脂肪酸など他の脂質との関係を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究目的は、臨床研究として栄養と脂質代謝が極低出生体重児の慢性肺疾患にどう関係しているか検討することであった。実際に行えた検討は残血清を用いた後方視的検討である。これによりリポ蛋白プロファイルと慢性肺疾患について検討できた。その結果、リポ蛋白プロファイルは慢性肺疾患に与える影響は少ないと判明した。しかし、赤血球膜の脂肪酸組成と慢性肺疾患について、検体はあるものの測定とデータ処理ができていないため今後も臨床検体を用いた検討を行っていく必要がある。初年度の検討では臨床検体を用いた検討を予定していたため、目的としていた検討の半分は達成できたと考えられる。以上のことから初年度の達成度としては50%であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究としては、さらに症例数を増やしていく。現在の慢性肺疾患患児は13例と少なく、慢性肺疾患となるリスク背景も異なるため、統計方法を考慮することにより、より臨床に則した検討をしていく。また、出生時からの経時的変化も検討することにより、出生後早期からの脂質代謝と慢性肺疾患の関係を検討していく。栄養法においても人工乳の種類による脂質成分も差異があるため、詳細な検討を行っていく。 臨床検討を基に、動物実験の検討も進めていく。動物実験では直接肺組織の脂肪酸組成を測定することにより、慢性肺疾患と脂肪酸との関係を検討していく。免疫染色などで肺に発現するアポ蛋白などの定量化を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
臨床検討として、機器のレンタル、検体輸送費、成果発表、研究成果投稿料に使用よていである。また、動物実験等しては、実験器具・消耗品、試薬などに使用予定である。
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