【背景】早産児にとって脂質は重要なエネルギー源としてだけでなく、成長や発達に不可欠な栄養素の一つである。特にDHAなどの長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)は、中枢神経や網膜に多く含まれ、神経発達と関係している。近年、早産児の予後に与えるLCPUFAの影響としては、血中DHAの低下と慢性肺疾患(CLD)との関連、血中アラキドン酸(AA)の低下と敗血症との関連が報告されている。今回、極低出生体重児(VLBWI)の生後早期における赤血球膜の脂肪酸組成と慢性肺疾患との関係を経時的に検討した。 【方法】2010年10月から2012年4月に当院に入院したVLBWIのうちCLDの有無により2群(CLD n=11、CT n=32、SGAは除外)に分類し、出生時、生後2週、生後4週、修正36週の赤血球膜脂肪酸組成を測定し、リノール酸、リノレン酸(ALA)、AA、DHA、EPAレベルについて両群間で比較検討した。 【結果】出生時の各脂肪酸レベルに有意差を認めなかった。生後2週ではAA(CLD 14.2 %/wt、CT 11.7%/wt)とALA(CLD 0.12%/wt、CT 0.22%/wt)に有意差(p < 0.05)を認めた。生後4週でも同様にAA(CLD 14.5 %/wt、CT 11.8%/wt)とALA(CLD 0.11%/wt、CT 0.24%/wt)に有意差(p < 0.05)を認めた。修正36週では各脂肪酸レベルに有意差を認めなかった。 【考察】過去の報告とは異なりDHAに差を認めなかったものの、AAとALAに差を認めた。今回の結果は生後早期の栄養管理がCLD発症に影響することを示した可能性がある。今後、経腸栄養法や脂肪乳剤使用などを含め、CLD発症防止のための適切な脂質栄養管理について多角的に検討する必要がある。
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