研究課題/領域番号 |
24791125
|
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
山岡 繁夫 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90434779)
|
キーワード | 子宮内炎症 / 早産児 / progesterone |
研究概要 |
当該年度は子宮内炎症モデル産仔へのprogesterone投与効果を検証することを目的とした。前年度、作成したLPS投与子宮内炎症モデル妊娠ラット及びcontrol妊娠ラットより出産した産仔を出生当日から生後7日目までprogesterone 20mg/kgを連日投与(腹腔内投与)する群と、偽薬(vehcle)投与群に分け、①control妊娠ラットより出生後、偽薬を投与した群=vehcle-vehicle(v-v)群、②control妊娠ラットより出生後、progesteroneを投与した群=vehcle-progesterone(v-p)群、③LPS投与妊娠ラットより出生後、偽薬を投与した群=LPS-vehicle(L-v)群、④LPS投与妊娠ラットより出生後、progesteroneを投与した群=LPS-progesterone(L-p)群の4群に分け、各種項目に関して検討を行った。 出産産仔数は各群間で有意差は無かったが、④L-p群においては生後7日までの死亡率は他群に比べ有意に高かった(Log-rank test, p=0.01)。産仔の死亡状況より、progesteroneの中枢神経鎮静作用がLPS前投与により増強した結果、呼吸抑制により死に至った可能性が考えられた。前年度の測定項目に関しては、中枢神経髄鞘化の指標となる脳組織中MBP (myelin basic protein)及びCNP(2’, 3’-cyclic nucleotide phosphodiesterase)mRNA発現を比較検討した。Control群に比し、母体LPS投与群ではこれらの発現は低下する傾向がみられたが、progesterone投与によりその発現はさらに低下する傾向がみられ、出生後のprogesterone投与は子宮内炎症による新生児脳内白質の髄鞘化障害をさらに増悪させる可能性が考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度同様、LPSに対する反応性の個体間格差が想定以上に大きく、また、既報よりも母体死亡率が高くなる傾向があり、モデルの再現性の確保が困難であった。 研究実績の概要に示したとおり、L-p群における新生児死亡率は著明に高く、約9割に達した。このため、必要な検体数の確保は困難となり、各種測定項目の比較検討も未だ十分にできていない。その原因に関しても詳細な検討はできていないが、progesteroneの持つ鎮静作用により呼吸抑制が起こった結果の換気不全が原因ではないかと考えている。これは、ヒトへの治療応用を考慮する際には極めて重大な副作用と考えられ、投与量や投与方法に関して再度、検討を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度においては、progesterone投与の治療効果に関して検討する予定であったが、現在までのところ、治療効果は薄く、むしろ有害である可能性すら考えられる。引き続き、同様にestradiolに関しても同様に検討を行う予定ではあるが、投与量・投与方法に関して慎重に決定する。 中枢神経系においてprogesteroneから合成される”allopregnanolone”は“neurosteroid”として作用することが分かっており、progesteroneの中神経系における作用の少なくとも一部はallopregnanoloneの作用であることが証明されている。新生児モルモットを用いた近年の研究において、中枢神経系におけるallopregnanoloneの律速酵素である5α-reductase type2のmRNA発現は子宮内発育遅延モデルや母体へのbetamethasone投与により変化することが報告されている。これらより、子宮内炎症により胎児・新生児脳内5α-reductase type2発現が変化する可能性が考えられ、子宮内炎症によりその発現が低下していたと仮定すると、progesterone投与を行ってもその実効薬物であるallopregnanoloneの上昇が見込めない為にその効果が認められなかったと考えられる。次年度においては、子宮内炎症により5α-reductase type2 mRNA発現は低下するという仮説の検証及びallopregnanoloneの治療効果に関する検証を行っていく予定。
|
次年度の研究費の使用計画 |
現在までの達成度】で述べた通り、LPS投与母体の死亡率が高かった点、LPS投与母体より出生した新生児ラットへのprogesterone投与による新生児期死亡率が高かった点が予想と異なり、十分な採取検体数が確保できなかったため各種項目測定に使用する薬剤等が少量となったため。 次年度においては、検体採取に際して再考し十分な検体を確保。前年度の検討項目に加え、新たに5α-reductaseの蛋白及びmRNA定量のための抗体及びprobe等を新たに追加購入する予定。
|