昨年度、行った実験において、子宮内炎症モデル新生児ラットに対するprogestroneの治療効果は明らかでなく、むしろ有害である可能性が考えられた。中枢神経系においてprogesteroneから合成される”allopregnanolone”は“neurosteroid”として作用することが分かっており、progesteroneの中神経系における作用の少なくとも一部はallopregnanoloneの作用であることが証明されている。新生児モルモットを用いた近年の研究において、中枢神経系におけるallopregnanoloneの律速酵素である5α-reductase type2のmRNA発現は子宮内発育遅延モデルや母体へのbetamethasone投与により変化することが報告されている。これらより、子宮内炎症により胎児・新生児脳内5α-reductase type2発現が変化する可能性が考えられ、子宮内炎症によりその発現が低下していたと仮定すると、progesterone投与を行ってもその実効薬物であるallopregnanoloneの上昇が見込めない為にその効果が認められなかったと考えられる。この仮説を実証するため、母体LPS投与後、胎齢20(E20)ラットの脳組織を採取しRNAを抽出。5α-reductase type2 mRNA発現をRT-PCR法にて測定。Controlラットと比較検討を行った。結果は2群間で有意差はみられず、子宮内炎症モデル胎児ラット脳組織においてallopregnanolone産生亢進が起こっていることは証明できなかった。
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