研究課題/領域番号 |
24791127
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
和田 友香 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (80399485)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 未熟児 / 薬剤 / 授乳 |
研究概要 |
書面により同意を得られた母親の母乳、未熟児の血液を採取した。検体採取の時期は生後1週間、2週間、1か月、それ以降は1か月毎とした。母乳の成分分析を行う予定であったが未熟児のおおよその成分についてデータが出たため不要となった。 母乳中・血中薬剤濃度は高速液体クロマトグラフ質量分析装置(HPLC/MS)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)等を用いて測定した。一方、薬剤を投与された母体から得られた母乳を飲んだ後の未熟児の全身状態の評価は酸素飽和度測定モニタリング(マシモSETラディカル マシモジャパン社)、呼吸心拍モニタリング(日本光電)を使用しながら呼吸数、心拍数測定、血圧、体温、尿量、栄養状態(哺乳量、嘔吐・排便の有無、体重増加速度)、黄疸の有無などを含む全身状態の観察を行った。エチゾラムなど新生児薬物離脱症候群の可能性 がある場合には新生児離脱症候群チェックリスト(磯辺健一ほか. 新生児離脱症候群の管理と薬物代謝. 周産期シンポジウム1996; 14:65-75.)を用いて薬剤の影響を評価した。また、退院後の児にも影響がないか発育、発達検査を行い継続して観察しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々がこれまでに行った成熟児におけるロキソプロフェン、エチゾラム、アムロジピンの母乳移行性に関する検討により初めてこれらの薬剤が安全であるということが明らかとなった。同様に現在までの結果からは未熟児においても安全そうである結果ででつつある。有害事象も認めていない。(データは非公開)また我々の施設では妊娠と薬情報センターにおける授乳と薬相談外来と新生児集中治療室を有しているため薬剤を内服しならが妊娠、出産、授乳を行う母子が全国から多く集まってきており、症例を集積するにも適していた。 今回の研究により得られたエビデンスに基づいた情報を提示することで、未熟児医療の発展と母乳育児支援の一端を担うことを可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新生児科医、小児科医、産婦人科医にたいしてエビデンスに基づいた情報を提示することで、母乳検体、血液検体の集積を継続するとともに前年度の成果を発展させる。 ①母乳を介した薬剤の未熟児への移行性とその影響についての総括を行う:得られたデータから薬物動態(PK; pharmacokinetics)、薬剤感受性(PD; pharmacodynamics)、 乳汁/血漿薬物濃度比(M/P比; Milk-to-Plasma drug concertration)、相対的乳児投与量(RID;relative infant dose)、血中濃度曲線下面積薬物 (AUC; Area Under Curve)を計算し、薬剤移行性についての検討を行う。 ②未熟児のフォローアップ:定期的に児のフォローアップを行うことで、その後の成長および発達への影響を調査する。これにより、薬物動態学に基づいて授乳の安全性を短期的に確認するだけでなく、近年一部の薬剤で研究が進み始めた神経認知発達(neuro-cognitive development)を考慮した長期的な安全性を確認することが可能となる。フォローアップは小児科医により1ヶ月、4ヶ月、10ヶ月、1歳等に可能な限り対面診察で行い、諸事情により来院が困難な場合は電話等により情報を得る。また、母体への内服が継続されている場合には児に蓄積がないか血中薬剤濃度測定を行って評価を行う。 ③研究課題の論文化:未熟児における母乳を介した薬剤の移行性とその影響について英語論文化し、未熟児において慎重投与とされていることが多い薬剤についての可否を示す。よりエビデンスに基づいた医療を提供でき、また母親にたいしては不必要な断乳を迫ることなく母乳育児支援の一端を担うことが可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度であり、成果を発信できるよう海外を含めた学会発表、英語論文化を中心とした総括の作業のために研究費を使用する。具体的には情報収集のための文献、書籍にかかる費用、学会出張にかかる費用、英文校正にかかる費用があげられる。また研究補助にたいし謝金を支払う予定もある。
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