薬剤投与を受けている母親の母乳、それを内服した未熟児において薬物濃度推移が 予測できているためTmax(最高血中濃度到達時間)での血液検体を採取した。検体中の薬物濃度はHPLC/MS (高速液体クロマトグラフ質量分析装置)等により測定を行った。 その結果、4人の乳児でのエナラプリル及びエナラプリラットの血中濃度に大きな変化はないように見受けられた。また、出生体重が1kg未満の超未熟児群の平均値が0.070 ng/mLに対して未熟児群の平均値0.043 ng/mLであり、エナラプリラットでは超未熟児群の平均値が0.526 ng/mLに対して未熟児群の平均値0.438 ng/mLであった。いすれも若干超未熟児の方が値が高めであったが、有意差はなかった。なお、いずれも測定値は検出限界以下であり、測定値を最良推定値と見なしての議論である。本研究では、測定点の数が少なかったために十分な議論を行うことができなかったが、活性代謝物であるエナラプリラットが母乳を通じて児へ移行する量は小さいと考えられたが、プロドラッグであるエナラプリルのRIDは5%を超える可能性があり、安全性の観点からさらに検討を行う必要があると考えられた。 アムロジピンではRIDの値は、平均約3%であった。母乳を通じての新生児へのアムロジピンの移行が低いことが推定でき、またこのことは、新生児におけるアムロジピンの血漿中濃度が定量限界以下で、母親の血中濃度の1/10以下であることにより確認された。なお、RIDのばらつきは比較的大きかったが(CV=43.5%)、新生児の体重や妊娠期間による影響は見られなかった。これより、アムロジピンを服用中の母親が授乳を行っても安全であると考えられた。これらの結果は論文作成過程である。 なおいずれの症例も長期的神経学的予後が不明でありひきつづきフォローアップを行っている。
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