研究課題/領域番号 |
24791128
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
秋武 義治 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (20508791)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 子宮内胎児発育遅延 / 周産期 / 精神運動発達遅滞 |
研究概要 |
本研究は女性の痩せ志向による妊娠中の低栄養が子どもの脳と精神の発達に及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を行なっている.初年度は食事制限による子宮内発育遅延 (IUGR) モデルの神経幹細胞を用いたin vitroの実験を行う計画であったが,安定したIUGRモデルの作成法の樹立とモデルの行動学的特性を決定することが先決であると考えられたため,計画の順序を一部変更した. 食事制限によるIUGRモデルマウスの作成はプラグ確認後の出産が不安定で困難であったが,妊娠8日目から正常妊娠動物の摂餌量に対し70%の摂餌制限を行うことで正常産仔より約18%体重の軽いIUGRマウスを作成する方法を確立した.さらに齧歯類の脳の発達は生後7日目がヒトの新生児に相当することから,さらに授乳7日目まで母獣の摂餌制限を続けた.このIUGRマウスの経時的な体重変化,開眼日,正向反射試験,背地走性試験,オープンフィールド試験,物体認識試験を行うことで身体的,行動学的特徴を評価した.これまでの結果から正常マウスと比較してIUGRマウスは8週齢までの体重が軽く,開眼日は約1日遅れるなどの身体的な発達の遅れが認められた.行動学的にも協調運動の発達に遅れが認められ,オープンフィールド試験では不安様行動が観察された.さらに物体認識試験を利用した学習記憶能力の評価においても障害が認められた.以上の結果をまとめると本研究で作成したIUGRマウスは精神運動発達遅滞を生じるモデルであると考えられる. 本研究のIUGRマウスは薬物や外科的処置を行わずに摂餌制限のみで作成されているにもかかわらず,身体的発達の遅れのみならず不安や学習障害などの精神的な異常も認められた.これは若い女性の痩せ志向によるダイエットなどの食事制限が子どもの精神発達遅滞の危険因子となることを示唆する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はIUGRモデルの作成方法を確立し,安定したIUGRマウスを入手できる状況になり,またIUGRマウスの行動学的特徴に関しても大要を明らかにすることができた.今後,詳細な行動学的特徴を調べるために更なる行動実験の必要があり,行動と関連した脳内変化の探索が今後の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行動実験の終了したすべての動物の脳は染色用サンプルとして準備作成してある.今後はこれらを使用して当初の計画通り神経幹細胞を中心として組織学的検討を行う予定である. In vitroにおいては初年度に確立したIUGRマウスを使用して神経幹細胞の培養を行い増殖能,分化能を調べる予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は主に組織学的検討を行うための各種抗体の購入,神経幹細胞の培養に必要な試薬の購入に使用する.また一部は本研究成果を論文発表するための英文校正費に使用する予定である.
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