研究課題
先天性魚鱗癬様紅皮症は、稀な常染色体劣性遺伝性の重症角化症である。近年、本症の病因の解明が進み、TGM1/ABCA12/NIPAL4/CYP4F22/ALOXB12/ALOXE3/CERS3/PNPLA1などの角化関連遺伝子の変異が本症の病因として報告されてきた。しかし、これらの遺伝子に変異を持たない症例も多く、本研究では、これらの遺伝子に変異を有していない患者について、whole-exome sequencingを用い、新規病因遺伝子の同定を試みた。患者は36歳男性で、生下時から全身に潮紅と鱗屑を認め、病理学的に不全角化を伴う過角化と表皮の肥厚を認めるものの顆粒変性はなく、家族歴もないことから、先天性魚鱗癬様紅皮症と診断されていた。この患者よりDNAを抽出し、whole-exome sequencingを行ったところ、本症の既知の病因遺伝子には変異を認めなかった。次に、患者皮膚から抽出したRNAを用いて、前述の遺伝子のmRNA発現を検討したが、すべて高値または正常であり、発現が低下しているものはなかった。従って、本患者は新規病因遺伝子変異を有している可能性が高いと考えられた。次に、他の角化関連遺伝子の検討を行ったところ、ケラチン10遺伝子に変異を認めた。ケラチン10遺伝子の変異では通常、表皮融解性魚鱗癬やichthyosis with confettiを発症するが、本症患者は臨床的に水疱やびらんを認めず、病理学的にも顆粒変性を認めなかった。また、confetti spotも認めなかった。現在、本患者におけるケラチン10遺伝子変異をさらに詳細に検討中である。
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Acta Dermto-Venereologica
巻: in press ページ: in press
10.2340/00015555-1832