研究課題/領域番号 |
24791131
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
皆川 智子 弘前大学, 医学部附属病院, 医員 (20436033)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 疥癬 / LAMP法 / ヒゼンダニ |
研究概要 |
疥癬は、その診断の難しさや感染力の強さから、最前線の皮膚科医にとって、常に忘れてならない皮膚疾患となっている。本研究の目的は、簡便・迅速で多くの検体を処理できる画期的な検査法の臨床応用、ならびに今後問題となる薬剤耐性虫の同定である。 1)ヒゼンダニ特異的プライマーの作成、DNAとLAMP法の条件の設定:我々はすでにヒゼンダニDNA塩基配列からPCRを行いある程度プライマーに適したDNA配列を決定しているので、その部位を基本としてLAMP法に適した種々のプライマーを作成し、得られたPCR産物をクローニングしてシークエンスを行いDNAの配列を確認、また、種々の温度反応を検討した。 2)適切な検体の採取:虫体、虫卵、排泄物などの検体から、PCRとLAPM法で増幅をおこなう。増幅産物をゲルに流して確認した。さらにサイバーグリーンや比色で定量する。また、どの程度で陽性になるか、最小量も決定し、寝具などのゴミから検査を行うことも検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LAMP 法のトリックは、通常のPCR で使用するプライマー1に加え、DNA 増幅で末端まで伸びたDNA 鎖を継続して新しい鎖の増幅を可能にするプライマー2、3を使用する点にある。従って通常のプライマー2 本と反応継続用プライマーが2 本で、計4 本必要になるが、反応の特異性が上がり、94℃でのDNA の変性も必要がない。また増幅されるDNA は鎖のように長くなるが、増幅反応は迅速になる。従来の疥癬の診断に用いるPCR 法は、3段階の温度で、3時間かかることと比較すると、画期的な進歩である。ヒゼンダニDNA を効率よく増幅できるプライマーを決定し、LAMP 法も、アトピー性皮膚炎での単純へルぺスウイルスの診断に応用し非常に有用であった 。
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今後の研究の推進方策 |
患者での実際の応用:実際に疥癬が流行している施設において、倫理委員会での同意を取る。実際に疥癬の流行している病棟で、鏡検とLAMP 法の感度や特異度の相違を決定する。また、実際に検体採取から診断までの時間などを測定する。さらに、虫体が消失してから、どのくらいLAMP 法が陽性になるかも検討する。 通常の病棟での検査:対象とする、疥癬の流行がよくみられる施設の、倫理委員会での同意を取る。疥癬の集団発生のおこっていない老人を主体とする病棟で、すべての患者や患者の寝具から検体を採取する。LAMP 法を行い、潜在する患者がどのくらいいるのかも調査してみる。 イベルメクチン耐性ヒゼンダニの同定:対象とする、疥癬のよく流行がみられる施設の倫理委員会での同意を取る。疥癬が集団発生している病棟を、定期的にスクリーニングすることで、イベルメクチンの効果がない患者、イベルメクチンが長期に投与されている患者、再発を繰り返す患者などに注意して、LAMP 法で調査する。それらから得られたヒゼンダニを国立感染症研究所などに相談し、イベルメクチン耐性の有無を依頼する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の多くは、消耗品の購入や実験補助への人件費に使用される。 遺伝子工学用酵素類・ キットの項目には、PCR やLAMP 法などのによる遺伝子増幅用のキットが含まれる。また、本研究では、数多くのプライマーの作成が必要となる。その他、ガラス・プラスチック器具と一般試薬も、今回の研究費には必須である。
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