本研究の目的は,RORγtの発現に伴い誘導されるTh17による接触皮膚炎減弱メカニズムについて 明らかにし,RORγtがもつTh17の誘導以外の働きについても検討することである.
1. RORγt遺伝子導入骨髄細胞の移植により作成した移植マウスの解析:C57/BL6系統の長管骨から採取した骨髄幹細胞・前駆細胞にRORγtの環状DNAを導入したものを致死量の放射線で処理した同系統のマウスに移植し,キメリズムは90%程度であった.解析kの結果はRORγt発現がある細胞でのインターロイキン17の産生は若干増加したものの,大きな差は無かった.そこでB細胞系統についての解析も並行して行うこととした(3.へ) 2. Neuropilin-1遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの解析:制御性Tの関連した免疫抑制にはNeuropilin-1の発現が関わっている可能性がある事に注目し,Neropilin-1のcDNAを挿入したトランスジェニックマウス作成を試みた.しかし,目的とするトランスジーンを持つマウスの作成は出来なかった.その理由として,ベクター自体も問題,使用したDNAの品質の問題,発現遺伝子が何らかの理由で胎生致死などが考えられた. 3.接触皮膚炎とB細胞サブセットについて:接触皮膚炎の発症にはエフェクターとしてT細胞の関与が大きいが,他方でB細胞サブセットのなかで制御性B細胞と呼ばれるインターロイキン10を産生するB10細胞がその病勢の強弱を制御していることが示唆されている.B10 とTh17に関して,B10が通常より多く存在するCD19トランスジェニックマウスの解析でTh17細胞の割合が低下し,逆にB10がほとんど存在しないCD19ノックアウトマウスでは増加する傾向が見られたことから,何らかの関連があると考えられる.現在,B10とTh17の関連を検討中である.
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